見出し画像

自分自身で創造性を定義せよーー映画『天才たちの頭の中』

この前、『天才たちの頭の中』というドイツの映画を観た。

とてもシンプルで、90分というコンパクトな映画。

この映画を特徴づけるのは2つの要素。

それは、「シンプルだが強い問い」と「監督の行動力」である。

この映画を貫くシンプルだが強い問いとは、以下のようなものだ。

Why are you creative?

では、この問いをどのような形で映画にしているのか。

それがこの映画の特徴の二つ目、監督の行動力につながるのだが、監督自身が創造的であると感じる芸術家やミュージシャン、政治家などに直接会いに行き、先ほどの問いをぶつけるのだ。その数なんと、1000人を超える。

その中から100人程度のインタビューを編集したものがこの映画ということになる。登場する人物を思い出せるだけ挙げてみると、例えば、デビッド・ボウイ、ヴィム・ヴェンダース、ネルソン・マンデラ、ビョーク、北野武、ザハ・ハディド、クエンティン・タランティーノなどなど。錚々たる著名人ばかりだ。

お金のかかるアクションシーンや演出はないが、シンプルだが強い問い×監督の行動力という、極力無駄を排した構成が映画の強さにつながっている。

さて、監督のWhy are you creative?という問いに対して、インタビュイーたちはどのように答えたか。

例えば家族を理由に挙げる人。創造的な親のもとで育ち、その親が私の創造性を引き出してくれたと家族への感謝を述べる人がいるかと思えば、親からの抑圧に反発し、そこから抜け出すためには創造性が必要だったと答える人もいる。

さらに。自身の才能について問われ、それは「生まれつき」だと答える人もいる。かたや、自身の創造性をたゆまぬ努力で創り上げてきたと答える人もいる。

この映画の中ではWhy are you creative?という問いに対する明確な答えは出てこない。というかむしろ、そのような答えは存在しないということがメッセージですらある。

しかし、一つだけ共通していることがある。

それは、それぞれのインタビュイーたちが、自分たちの言葉で、「創造性とは何か」「創造的であるための方法論とは」という問いに対しての、考えを提示しているということだ。

当たり前じゃないか、と思われるかもしれない。

しかし、私はこの映画を観ながら、「あー、そうか」と深く納得したのである。

どういうことか。

創造性ということについて考えるとき、あたかも一般的に客観的に「創造性」というものが存在しているという風に私は考えていた、ということに気づいたのだ。

しかし、この映画に登場するアーティストやミュージシャンたちはそのような形で「創造性」をどこかにあるものとして考えていない。自分の置かれた文脈の中から、自分自身で創造性を定義し、自らの方法論でもってその創造性を実現しているように見える。

普段の仕事をただの「タスクの処理」にしていないか。映画を観た後、そんな反省をしてしまった。それはもちろんよい意味で。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?