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論理的思考法と、そのトレーニング

論理的思考を身に付けたいと考えている方へ。

ビジネス上で「論理的な文章を書きたい」「論理的に話したい」と考えている方は多いかと思います。端的なメール文章を書くことができれば、あるいは理路整然と語ることができれば、それらはビジネス上で大きな武器になります。

本記事では、論理的思考のフレームワークと、それを身に付けるためのトレーニング方法について触れていきます。

【もくじ】
1.論理的思考のフレームワーク
  1.1.前提
  1.2.根拠
  1.3.導出
  1.4.主張
  1.5.期待
2.トレーニング方法
3.ロジカルシンキングとは
4.まとめ

東南アジアに海外赴任をしていたことがあるのですが、その際に一番苦労したことは現地の方と共通認識を持つことでした。東南アジアでは、生活上/ビジネス上の常識が異なるため、「そんなの当たり前じゃない」の一言で自分の主張を押し通すことができません。そんな中で私は、論理的に噛み砕いて説明をすることで、現地スタッフとの相互理解を図っていました。その苦労をまとめたものが、本記事です。

1.論理的思考のフレームワーク

まず、論理的思考のフレームワークを紹介します。下図です。

論理的思考/ロジカルシンキングについて触れている書籍は世の中に溢れていますが、結局はこの[前提→根拠→導出→主張→期待]構成に落ち着きます。図に記載されている構成要素を1つでも省くと論理がおかしくなるため、この構成にならざるをえないためです。詳細は後述していきます

論理的思考のフレームワークを構成する要素は前提、根拠、導出、主張、期待の5つです。これを反対から読み取ると、論理的でない文章というのは、上記のいずれかに問題があるということが分かります。つまり論理の中に、前提がないか間違っている、根拠がないか間違っている、導出がないか間違っている、主張がないか間違っている、期待がないか間違っている、ということです。あるいは、それらの組合せの場合もあります。

ここから、それぞれの要素の概略説明と共に、それぞれの要素がないと論理がどうおかしくなるのかを見ていきたいと思います。

1.1.前提

前提は、論理を進める上で土台となる共通認識を作る部分です。ここが合わないと、話が全く噛み合わなくなってしまいます。

私は仕事で通信系のSEをしており、そこで良くある一幕をご紹介します。
  Aさん:このお客さんからインターネットが使えないって苦情が来ているんだけど、何とかしてくれない?
  私:了解。で、それは「いつから」「どこの拠点」で使えなくなっていて、「誰」が苦情を入れてきたの?

この例で、僕は意地悪で質問をしているわけではなく、Aさんと前提(共通認識)を合わせるために質問をしています。Aさんにとって僕の質問内容は分かりきったことかもしれませんが、僕はその前情報を全く持っていません。極端な話、Aさんは札幌拠点について触れているのに、僕は大阪拠点についてトラブルシューティングを始めてしまうかもしれません。

一般に、相手が5W5Hに関して(可能な限り)同じ認識を持っているかを確認しておくと、その後がスムーズに進みます。
※5W5H=Who, When, Where, What, Why, How, How long, How much, How many, How often

1.2.根拠

根拠も、自分の論理を支えるものです。前提が土台であれば、根拠はその上に積み上げられるレンガです。

「根拠のない論理は納得しがたい」ということは、何となく分かるかと思います。「明日、世界は破滅すると思う。根拠はないけど」と主張する人がいても、この主張に賛同する人はいないでしょう。

一般に、根拠がないままなされる主張を見ることはあまりありません。一方、根拠の精度が疑わしいままなされる主張は巷に溢れています。ここでのチェックポイントは下記のものです。
  ①A 根拠に証拠(事実)はあるか、
  ①B 根拠が話者の意見(断定)ではないか
  ②言葉の意味が定義されているか

①A/Bについて例えば、意識をしながらネットを見れば、「ダイエットには〜が良かったです」のような記載を見つけることができます。「そう思った証拠は?あなたがそう思っているだけの、ただの意見ではないですか?」と疑うことができます。

②について、「ダイエットに効果あり」という記載があったとして、この「効果あり」はどのように定義できるでしょうか。「1週間で1kgやせること」なのか、「1ヶ月で1kgやせること」なのかで、論理の意味合いが変わってきます。

1.3.導出

導出は一般に、主張と根拠を結ぶ接続詞として現れます。「明日は日曜日だ。なので、市役所はお休みだ」という文章の中の、「なので」が導出です。この例から導出をなくしてみると「明日は日曜日だ。市役所はお休みだ」となり、根拠と主張のつながりが見えずらくなるということが感じられるかと思います。

導出については、下記の2点がポイントです。
  ①その導出が妥当かどうか
  ②他の導出の可能性を見落としていないかどうか

①について、「ナマズが暴れた。なので、地震が来る」という文章では、この「なので」が間違えて使われているように見えます。「ナマズが暴れた」という根拠は事実かもしれません。しかし導出が間違っているため、主張もおかしくなっています。

②について、「彼女が笑った。つまり、私に気があるということだ」という文章を考えます。彼女が笑ったことは事実ですが、それは私に気があるのではなく、私をバカにして笑っていただけかもしれません。一般に、同じ根拠から複数の導出を導くことが常に可能です

1.4.主張

主張とは、論理の主役となるべき、自分が伝えたいことです。今まで説明してきた前提・根拠・導出はこの主張を後ろから支えるものに過ぎません。主張がない論理は、単に事実の羅列となってしまいます(例:明日は日曜日だ。ナマズが暴れた。彼女が笑った)。

主張に関しても、2つポイントがあります。
  ①最初に主張を明確にしたか
  ②その主張は他人と異なるものか

①について、主張は他の要素に先立って、まず最初に明確にしてください。この際には直感で決めてしまって構いませんし、後に変わってしまっても構いません。これは、仮にでも主張を決めてしまわないと、前提・根拠・導出を考えるステップでブレてしまうためです※。

②を確認するのは、自分と他人が同じ意見なのであれば、敢えて主張をする意味が(普通は)ないためです。

※このやり方だと、結論ありきの論理になってしまうように思われるかもしれません。そしてそれはその通りです。論理は自分の主張を他人に共有するための方法であって、新しいアイデアを生み出すためのものではないと、私は考えています。新しいアイデアの生み出し方については、私の他のnoteをご参照ください。

1.5.期待

期待は、主張をすることで何を望んでいるのか、を示します。前節にて、他人と違う意見でなければ主張する意味はないと述べました。次に考えなければいけないことは、他人と違うその主張を行うことで何をしたいのかという意図です。

一般にこの意図は、「他人に何か行動を起こしてほしい」です。なのでここのステップでは、主張をすることで他人に何をして欲しいのか考えると良いです。

ビジネスの現場では、下記の4つが多いと思います。
  ①情報共有 (=相手は何もしなくて良い)
  ②判断 (=相手に、良いか悪いかの判断をして欲しい)
  ③相談 (=相手に、次の打ち手を一緒に考えてほしい)
  ④依頼 (=相手に、これこれをしてほしい)

例えば、「案件をこう進めようと考えているが、大丈夫かどうか確認してほしい(判断)」「自分の会社の商品を買ってほしい(依頼)」等が期待として考えられます。

2.トレーニング方法

他の技術と同じように、論理についても、フレームワークをなぞる練習を繰り返し続けることが最良のトレーニングです。

私の経験上、自分の感情をトレーニングの題材にすると良いです。感情は頻繁に発生するのでネタが尽きることがなく、また、感情を論理的に捉えることで冷静になれるためです。

例えば、会社で何かイラッとすることがあったとします。この感情を主張と捉え、下記のようにして論理的に解きほどいていきます。
  ①主張:イラッとした
  ②前提:上司は部下を助けるべき
  ③根拠:上司に相談をすると「そんなことは自分で解決しろ」と返された
  ④導出:なので
  ⑤期待:上司にもっと部下思いになってほしい

①〜⑤をフレームワークの順番でつなげると、「上司は部下を助けるべきである。(ところが)上司に相談しに行ったところ無碍に返されてしまった。なので、イラっとした。上司にはもっと部下思いになってほしいものだ」という論理を組み立てることができます。このとき下記の、構成要素ごとのチェックポイントを見直しながら行うとより良いかと思います。


【構成要素ごとのチェックポイント】
【前提】
    ・5W5Hを相手と共有できているか
【根拠】
    ①A 根拠に証拠(事実)はあるか、
    ①B 根拠が話者の意見(断定)ではないか
    ②言葉の意味が定義されているか
【導出】
    ①その導出が妥当かどうか
    ②他の導出の可能性を見落としていないかどうか
【主張】
    ①最初に主張を明確にしたか
    ②その主張は他人と異なるものか
【期待】
    ①情報共有 (=何もしなくて良い)
    ②判断 (=良いか悪いかの判断が欲しい)
    ③相談 (=次の打ち手を一緒に考えてほしい)
    ④依頼 (=これこれをしてほしい)

※また、このように分解をすると新たな気付きを得ることができます。例えば、「上司は部下を助けるべき」という前提を上司も持っているかと疑うことができます。もしかすると上司は、「部下は上司に良い結果だけを持ってくるべき」と考えているかもしれません。他の要素についても同様に、分解することで別の可能性を考えるきっかけになります。

4.まとめ

論理的に物事をまとめたいときには、①まず主張を仮決めし、②前提と③根拠を洗い出し、④接続詞を用いて導出を行い前提・根拠と主張をつなぎ、⑤その主張から自分が期待していることを明確にする、という5ステップが必要であるというお話をしました。

また、そのトレーニングのためには自分の感情を説明する練習が良いということついても触れました。

最後に1つだけ注意なのですが、上記5ステップを全て書き出すと冗長な文章になってしまうことが多いです。例えば、頭の中で論理を考える際に前提は意識されるべきなのですが、書き出す際には(相手と確かに共有できている前提であれば)一部を省く等して、文章を短くする工夫が必要なことがあります。

分かりにくい点あれば、コメントいただければと思います。よろしくお願いします。

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