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人口が300年で100分の1になるというお話

原俊彦さんという人口学者の方が書かれた
「サピエンス減少」という本を読みました。

その本の内容をすべて受け売りするつもりはありませんが、
ちょっと衝撃を受けたことがありますので、
それをシェアしつつ、日本人の未来や
人類の未来について考えてみたいと思います。

今日、書く内容は、人によっては違和感があったり、
不快感があるかも知れません。
しかし、個人の感情と現実というものに乖離があるときに、
自分はその二者をどれほど分離できうるか、ということに
関心を持っていただけるといいと思います。

まずはじめに、これは前提としてなのですが、
またこれは数字的な事実としてなのですが、
「人口が維持される」とはどのような状況なのかを
共有しておきたいのです。

人間が、今はまだ存在していない科学の力を借りず、
つまり人間がもともと持っている生殖能力だけで、
という条件のもとで、ですが、

「人口が維持される」ということは、
すべての女性が人生の中で、平均して2.1人の子どもを産む
ということと同義です。

今のところ、人間が子どもを産むには
男女ひとりずつのつがいが必要で、
生まれてくる子どものうち約半分は
出産する能力のある「女性」ではないわけなので、

また、生まれた女児が100%の確率で
子を産める年齢まで成長しない可能性もあるので、

この女性一人当たり2.1人という数字が算出されています。

逆に言えば、すべての女性が
生涯に生む子どもの数の平均が2.1以上にならない限り、
地球上の人間の数は、スピードの差こそあれ、
減っていくということなのです。

これは客観的な事実だとしましょう。
ちなみに、2022年の段階での日本のこの数字は、1.31です。

先ほどの本、「サピエンス減少」は、
2022年の7月に、国連によって発表された推計を根拠に
これからの人口に関して論考したものです。

その中で、いくつか印象的な内容があります。
●世界人口は西暦2100年の段階で103億5千万人になる
●しかしこれはピークではない
●ピークは2086年で、104億3093万人
●つまり2086年を最後に、世界の人口は減少に転ずる

・・・ということなのです。
世界の人口とは、つまり人類の数ということです。
人類の数はこのままどんどん増えていくのではなく、
2086年以降減っていく。

この人類全体の数というのは、
地球上の様々な地域で起こる人口動態の波が
すべて合わさったものであって、地域的なタイムラグがある。

一般的には社会が安定し、経済的に豊かになることで
人口が爆発的に増えていき、寿命が伸びていく。
その反面、人々の人権意識が確立し、
女性が出産時期をコントロールすることが可能になると、
晩婚化し、出生数は減少していく(という傾向が読み取れる)。

一時的に爆発的に増えた世代が長寿化することで
一定期間人口全体をささえるが、
やがて彼らが老年期となり、一気に死に始める頃には
新しく生まれてくる子どもの数は激減しており、
その二つの波が重なることで人口は一気に減っていく。

今、日本で起きているのはまさにこの現象であり、
しかもこういう一連の動きが世界の各地で
タイミングをずらしながら起きていくというのです。

ご存知の通り、私たちの日本は
世界で最初に超高齢化社会を迎える国であり、
最後にそうなるのがアフリカですね。

アフリカでは今でも人口がどんどん増えています。
2086年までの人口増加を支えているのも、アフリカです。
しかし、そのアフリカでの人口増加でさえも
世界中で起こる人口減少の波を補えなくなるのが
2086年ということです。

人口動態の予想はだいたい2100年あたりで終わっていますが、
もちろん地球の歴史が2100年で終わるわけではなく、
そのあとが存在します。

問題は、その後どうなるのか、ということですね。

ダブリングタイムというものがあります。
今の人口が2倍に増えるのに、どれくらい時間がかかるか、
ということです。

それが、人口爆発が起きている時は35年なのだそうです。
35年、つまり人間のひと世代で人口が倍に増えるということです。

そんなことってあるか? と一瞬思いましたが・・・

振り返ってみると、私が中学生から高校生くらいのとき、
つまり1980年代半ばから後半あたりでは、
世界の人口は48億人と言われていました。

当時、流行したザ・ブルーハーツというバンドの
「ハンマー」という歌の中にこんな歌詞があります。

 ♪48億の個人的な憂鬱
  地球がその重みに耐えかねて軋んでる

あれから約35年ほどが経過し、いま世界人口は80億です。
倍にはなっていませんが、それに近い速度で増加しています。

ダブリングタイムが倍に増えるまでの期間であるのに対して、
半分に減るまでの期間を半減期と言います。
放射性物質の影響がどれくらいで減るか、というときに
よく聞く言葉ですが、人口動態でも使うそうです。

で、人口爆発で人間の数が倍化するのと同様に、
人口爆減といって、一気に減っていく現象も起こるわけですね。

例えば、出生率が2022年の日本のレベル、
つまり1.31あたりのままだった場合、
人口は300年以内にピーク時の100分の1に減るそうです。

100分の1ですよ!
10分の1ではなく!!

ちなみに日本は今のままの出生率なら、2200年で人口2000万人、
2300年で人口200万人以下に減るそうです。
それは世界人口でもいえるので、
人口100億人の人類が300年以内に1億人になってしまうということです。

そんなことがあるわけないだろう、と思いますよね。
どんな指数関数のグラフも急激に上昇をするものの、
そのまま上昇をつづけるわけではなく、
あるところで限界を迎えて、また平坦に戻ります。

減少でも同じことで、ある一定になれば
それ以上は減らなくなる平衡状態になると思われます。

私もそう思っています。

が、この人口動態というのは人間の数なので、
自然現象ではないということが重要です。

自然界はいつもバランスをとるように動きますから、
何かが減って別の何かが急激に増えても、
長い目で見ればまた均衡するように作用します。

例えば何かが原因で一時的にイナゴが大量発生したとしても
それだけ大量のイナゴを一度に支えるだけの食糧はありませんから、
イナゴ自体も一気に死んでしまいます。

そしてそのあとはまた依然と同じような数字に戻るということですね。
イナゴなら、そうなります。

今、人間が爆発的に増えた理由は、
それだけの人口を養うだけの食糧や、エネルギーや、
治安、人権が確保されているからです。
これらは知恵と高度なテクノロジーによって実現されたものです。

地球の環境限界がありますから、
いずれ食糧やエネルギーは限界に達し、
それ以上人口が増えることができない状況は来ます。

イナゴの場合と同じです。
これは人口が増える場合の上限ですが、
では、減る場合はどうでしょうか。
イナゴはたとえ一時的に大量発生することができても、
食糧がなくなれば多くは死に絶え、
残ったものが与えられたキャパシティの中で、
子孫を残すという自然の営みによって、また均衡状態に戻すわけです。

イナゴには人権の意識などはありませんから、
状況が許せが子孫を増やすのが自然な状態です。

しかし人口は「人間の数」なのであって、
人間には個々の「意思」や「気持ち」がありますから、
その人間の意思や気持ちがどのように変化するかということと
人類の数的な危機は連動しているということになります。

先ほども書いたように、人口減少が下げ止まるということは、
すべての女性が生涯に生む子どもの数の平均が2.1になるということです。

地球上のすべての女性が、です。

もちろん平均値なので、産まない人もいれば、1人だけ生む人もいます。
その平均が2.1になり、それが数十年つづくことで、
はじめて人口減少は「止まる」ということになります。

しかも女性が子どもを産める年齢は15~49歳くらいまでですから、
極端な話(でも事実として)、
この地球上に、いや全宇宙にといってもいいのですが、
人類がたとえ1億人残ったとしても、全員が50歳以上なら、
もう人口は増えることはないわけで、
その1億人全員で、ただ人類の絶滅のときを待つしかない、ということになるわけです。

そんな話はSFだと思うでしょうか?

もちろん、SFかも知れません。
しかし、厳然たる事実として、出生率が2.1以上にならない限り、
人類はいつかいなくなります。

人類最後の二人という男女が、
子どもを一人しか産まずに50歳を迎えた場合、
その段階で絶滅が確定します。

もっと人類の人数がいたところで、平均が2.1を下回れば、
それは局所において同じ現象が起きているのであって、
人間の意識が変わらない限り、いつか人類は姿を消すのです。

それは可能性としては事実としか言えません。

今、出生率が下がっているのは
経済的なことが原因だと言う意見があります。
その側面があるのも事実でしょう。
しかし経済的な障壁がなくなれば、
すべての女性を平均した出生数が2.1になるでしょうか。

女性は放っておけば子どもを産みたいのでしょうか。
生涯で2.1人の子どもを産むことが、女性たちの願いでしょうか。

つまり出生率2.1は自然現象なのか?ということです。
野生の生物はともかく、人間は、障壁を取り除けばその数字になるのか?
人口の問題で言えば、それだけが問題なのです。

そして出生率の低下の原因の一部が
「女性の人権が確保されてきたこと」である場合、
(そしてそれはある程度、事実であると言えます)
つまり、人類は文明化し、賢くなっていった結果として
種の保存ができなくなって絶滅する、という流れがあることを認めた上で、

女性の人権をしっかりと確保しつつ、
女性たちが人類の絶滅という事象を自分ごと化し、
自らの手でそれを防がなければいけないという意志を持って
種を保存する、つまり子を産む以外に、
人類を絶滅から救う方法はない、ということが言えるのかも知れません。

このようなことを言うと、女性の権利を蔑ろにするやつの発言だ、
と言われてしまうでしょう。
あいつは危険な思想を持っている、と決めつける人もいるかも知れません。

日本ではとくに富国強兵、産めよ増やせよの悪き記憶がありますし、
昨今のジェンダー平等の観点からも、
国家や男性が女性に対して子どもを産むことについて語ることは
タブー視されているのが現状です。

私自身、女性の権利は必要ないなどと思っていません。
性別に関わらず、すべての人の人権は守られなければなりません。
それは人間の尊厳であって、何よりも大切なことです。
私は人権派です。

女性に子どもを産ませろなんて、誰にもいう権利はありません。
けれど、人権というものが及ぼす影響について、
目を瞑って知らないふりをするのもちがうと思っているのです。

ですから、考えうる事実をテーブルに乗せ、
「さぁ、どうしよう?」と皆で考え、知恵を集めるしかないのです。

このまま絶滅してしまおう!という選択肢もあると思っています。

しかし、それを今の世代だけで決めることは許されるのか?
意思決定に参加できない子どもたちや、生まれくる次世代に、
そのことを共有できるのでしょうか。

とても難しい問題です。

しかし、厳然たる事実として再共有しますが、
今の出生率がつづけば、300年以内に日本は消滅するし、
世界でも同じことが起きれば、人類は地上から消えます。

大量の外国人が日本に移民として暮らすことになれば、
一時的に日本の人口減少を食い止められる可能性はあります。
しかし長い目で見ればそれも一時凌ぎなのです。

人口減少はいずれ世界中で起こるのですから。

それは、今まで数え切れないほどの種が絶滅してきたのと同じことです。
ただし、原因がちがいます。
人間が自らつくりあげた社会的・経済的な理由で、
人類は絶滅する可能性があるのです。

是非、頭の片隅に、置いておいてください。
そして、タブー視せずに考えましょう。

ずっと先だと思っていたことが、
想像以上に早くやってくる可能性はあるのです。

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