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Pring買収の記事を紐解いて資本政策を想像する

Revueのサービス終了に伴い、そちらに掲載していた記事をnoteに移設しています。本記事は、Revueにおいて 2021/6/17 に掲載したものです。

2022/12/15

日本経済新聞が「Googleが決済サービスのPringを買収」という報道がでました。特に一番最初の報道では「グーグルがみずほ銀行などプリンの既存株主から全株式を200億~300億円で取得する方向で最終調整に入った」と記載がありました。投資家はこの数字を信じて相当なキャッシュがメタップス社に入ると見たでしょう。

しかしその後のメタップス社の開示によると、45.3%を4,921百万円で買収したとのことです。100%換算では108億円なります。

持分法適用関連会社株式の売却に関するお知らせ: メタップス社の開示資料

日経新聞の記事の数字からは半減に見え、一部投資家からは期待損のような声も聞かれました。

その後のさらに新しい記事をみると「13日、プリンの株主であるメタップス、ミロク情報サービス、日本瓦斯(ニチガス)がグーグルへの売却を正式に発表した。買収額は非公表」「少数株主を含めた株式の譲渡価格は計100億円程度だが、これにプリン社員らが保有するストックオプション(新株予約権)や、買収に伴うプレミアム(上乗せ幅)を加味した「取得総額は200億円程度」(交渉関係者)とみられる」とのことで、プリンの大株主であるメタップスは他株主に対してプレミアムを載せないかたちになったが、その他の株主は高いプレミアムを要求してGoogleはそれに応じた、ということでしょうか。

スタートアップのストックオプション(SO)については、M&A時の取り扱いについては各社各様で、M&A時には会社による無償取得条項がついているケースも多々あります。今回はGoogle社がSOも買い取ったということなので、SO保有していた社員にとっては非常に有利に働いたディールだったことでしょう。

ただ、このフェーズで出しているSOの比率は10%がいいところだと思うので、メタップス社およびそのSO保有者への支払いは1.1倍(トータル55億円)がいいところでしょう。

そうすると、少数株主のプレミアムがえらいことになりそうです。

報道のとおりトータルで200億円、メタップス社50億円、SOに5億円とすると、残り55%で145億円くらいとなり、メタップス社への1%=1億円に対して3倍ほどの価格までプレミアムを乗っけたようにみえます。

しかし、ミロク情報サービス社(2020.10.15出資、22.7%保有、約1,540百万円の特別利益が発生)や、更にその前に出資していた日本瓦斯株式会社(2018.7~2018.11に出資、18.6%保有、12億円の特別利益が発生)の業績インパクトと出資タイミングからのキャピタルゲインの計算があいません。

結構な比率を事業会社が持っているので、経営陣にSOを相当だして、経営のグリップを高める戦略でいたのか?というようにも見えます。

上記はあくまでざっとした計算ですが、こういう買収案件から資本政策を探ると、面白い物が見えます。


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