M&Aセンターの不正の温床はどこにあるのか
日本M&Aセンターの不正に関する調査報告書が話題に
日本M&Aセンターの不正に関する調査委員会の報告書が話題です。
そもそもM&Aセンターで何があったかというと、成約前の仲介業務の契約書の写しを偽造するなどして売り上げを前倒し計上する不正行為があったのです。
さかのぼると、21年12月に『当社連結子会社の売上の期間帰属等に関する調査のお知らせ』が出ており、当時は「売上計上タイミングで、契約書に捺印した日か契約書記載の日かが微妙とかそういう話かな」くらいの捉え方をしていた株式市場でしたが、今回開示された調査報告書でもっと闇が深いとのことで衝撃を与えました。
調査報告書において、三宅社長は任期満了まで月額報酬の50%を減額され、50%を自主返納。管理部門を管掌する楢木孝麿副社長は同様に30%減額プラス20%自主返納の上、専務へ降格。竹内直樹常務は30%減額プラス20%自主返納の上、平取締役に降格して営業本部長を退く。大槻昌彦常務は10%減額プラス10%自主返納、分林保弘会長は20%減額プラス10%自主返納、そのほかの取締役は10%の自主返納という処分になっています。
これは社内の責任の所在が明確にされているため、社長と不正に気づかなかった管理部門の責任者が重いこと、そして最も不正が行われていた営業本部担当の竹内常務が重い責任となっています。一方、ここには営業本部のひとつを管掌する渡部取締役は自主返納のみとなっています。
調査報告書から見える不正の温床とは
『調査委員会の調査報告書の受領及び公表に関するお知らせ』の、M&Aセンターの不正会計についての調査開始に至る経緯によると、最年少取締役の渡部さんが“誘われたけど断った”という部下の報告を受けて気づいたということです。
組織図によるとM&Aセンターの営業部門は提携統括事業部、大手金融事業部、戦略統括事業部、成長戦略事業部、業種特化事業部の5事業部があります。左4つが竹内取締役、業種特化事業部のみが渡部取締役の配下にあります。
報告書の不正発生件数をみると、不正を報告・発見した渡部さん達の業種特化事業部だけ不正がありません。逆に竹内取締役の配下ではすべての事業部で起こっているようです。それは処分に差が出るわけです。
売上プレッシャーが不正を起こしたということですが、同社の会社サイトによると、業界再編部は社内最大の売上をあげているようです。
つまり、単純に「売上プレッシャーが強いから」とは言えないのでないでしょうか?営利企業である以上、すべての企業は売上高と利益をあげようというプレッシャーはあるはずで、それが“良いプレッシャー”なのか“悪いプレッシャー”なのか、それによる働く人のマインドでしょう。
システム統制などにより“そもそも出来なくする”も勿論重要だけれど、やはりリーダーが作る“不正をしない文化”も非常に大事だということがよく分かります。
サポートしてくださった方のご厚意は、弊社の若手とのコミュニケーションのためのコーヒーショップ代にさせていただきます。