元採用部長から新卒採用担当者へー3、採用計画と数字

採用すべき人材とコンセプトができあがったら、プロセスの設計に入ります。その前に事前にやるべきことがあります。とても簡単なことですが多くの企業で行われていないのが現状のようです。
それは、前回の採用についての振り返りです。とはいっても、説明会の内容とか面接のやり方とか、そういうことではなく、数字の振り返りです。

エントリー数、応募数、説明会参加者人数、面接人数、内定受諾人数などなど、それぞれのステップごとに数字と割合を振り返ります。これは、とても重要なことで、この作業をすることでどこのプロセスにどのような課題があるのかを明らかにすることができます。

例えば、来年は内定受諾者数をあと5人増やしたいと考えた時に、単純にエントリー数を増やそうとするのではなく、プロセスの過程の歩留まりをどう改善するかを考えることで、同じエントリー数でも受諾者数を増やすこともできます。

私が新卒採用の担当を始めてやったときのことです。
活動開始前にそれぞれのプロセス毎の数字をNaviを運営する会社の方の意見を参考に作りましたが、説明会まであと2か月というところでエントリー数が計画より1000人くらい少ない状況になってしまいました。Navi運営会社の勧めもあって、追加の広告を打って、800人くらい増やすことができ、その後のプロセスをほぼ予定数で進めることができました。
しかし、終わった後に分析していみると、その800人のための費用とその方々のために費やした時間は、ほぼ意味がないことがわかりました。800人から内定に至ったのは、内定者数のわずか5%で受諾者は”0”だったのです。よくよく見てみると、800人は途中での脱落が非常に多かったことがわかりました。特に二次選考がなかなかハードルが高い(学生に負荷をかける)のですが、そこでの辞退者がとても多かったのです。このことから、私たちは多くの費用と手間を意味のないことに費やしたことに改めて気づきました。

他にも数字から見えてくることはたくさんあります。まずは、一枚ものの詳細なレポートを作成して、プロセスと学生毎の数字をしっかり追いかける必要があります。そのうえでプロセスの設計をすることになります。

”選ばれないと選べない”

私がプロセスの設計をするときに基本としていることがこれです。関係する人たちにも一番に伝えています。説明会に受付も、面接官も、学生をアテンドする人も、すべての人がこのことを理解をしておかなければなりません。
そして私の場合には、これをプロセスの中に意識的に盛り込むようにしています。ただし、ないことをあるかのようにいったり、必要以上に学生に対して媚びたりすることは絶対にしないので、あくまで”正しいことを正しく伝える”というのが基本になります。

とはいえ、会社も選ぶ必要があるわけですので、その意識も合わせて持たねければなりません。しかし、すべてのステージで同じように両方を意識することが非常に難しいと思います。ですので、プロセスのステージでその意識の割合を変えていくこととなります。


これらのことを意識しながら、プロセスを考えていきます。

オーソドックスなプロセスを例にすると、以下のようなことをデザインすることになります。
 Promotionの内容と方法
 エントリーの方法と入り口の在り方
 会社説明会の内容と方法
 アセスメントテストのタイミング、内容とその使い方
 面接の回数、場所、面接官、方法、評価軸
 内々定者の決定の方法、タイミング、伝え方
 返答待ちの対処とその期間の活動
 内々定受諾後の活動
 プロセスの途中で行うべき活動
 プロセス全体の運営の体制

これらをコンセプトノートで想定した学生の気質やライフスタイルなどを意識しながら具体的なプロセスに落とし込んでいきます。

例えば、ビジネスに興味を持つ学生は、ビジネスコンテストの情報収集をすることが多いのでそれを利用するというようなものがあげられます。説明会はスーツでなくてよいとすることで、他のスケジュールと調整しやすくなるので、参加率が上がるかもしれません。エントリーシートは、多くの場合かなり前半(場合によって会社説明会前)で提出をさせて最終面接まで利用されますが、本当にそれが正しいのか。履歴書は手書きでなくてはいけないのか。などなど。”選ばれる”ステージで必要な情報・アクションとその後の選考および”選ばせる”ステージで必要な情報・アクションは異なるので、それも意識する必要があります。

いかにエントリー数を増やすかなどについていろいろな方策が出回っておりますが、採用担当者のゴールはエントリー数ではなく、入社者数です。それを意識して、数字の力をかりてプロセスの設計をすることがとても重要です。

プロセス設計は選考方法も含むので、はどうしても会社の意向が強く反映されてしまいます。しかしながら、プロセスでのCandidate Experience(興味をもってもらってから、入社確定までに候補者がどのような体験をするのか)こそが重要ですので、昨年までのプロセスを”選ばれるため”、”選ばせるため”に正しいステップであったかを検証しましょう。

最近では、新卒採用の選考にGroup Discussion(GD)ではなく、半日レベルのGroup Work(GW)をさせるところも増えてきました。特にITや機械工学系の職種で利用されているようです。そうした職種は専門的な知識も重要ですが、ビジネスを進めるうえでチームワークやリーダーシップが必要になります。通常のGDでは、そのあたりがなかなか見ずらいので、複数のコンピテンシーとビジネス・リテラシーを一度に確認できるGWを利用するようです。

プロセスの設計は、ターゲットとなる学生とその学生が持つべき資質を見極めることが目的ですので、いままでの面接を主体とした方法に問わられることなく、独自の方法を検討してみると、学生からもより強い興味を持ってもらえるかもしれません。

プロセスは、もちろん選考することが主な目的ではありますが、会社を売る(正しく理解して選んでもらう)という意識を一貫して盛り込むことが重要です。

皆様のご健闘をお祈りしています。



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