元採用部長から新卒採用担当者へー2、コンセプトノートの作成

採用すべき人材について、その人材像が決まったらプロモーション活動を行うことになりますが、皆さんは、その人材像を意識したプロモーションをされていますでしょうか?

どうも新卒採用では、学生をひとくくりにとらえて採用活動のプロモーションを行う傾向が強いように思います。優秀層という言葉もよく使われますが、なにをもって優秀とするのか、だれにとって優秀なのか、結局その定義は曖昧なままで非常に一般化された言葉として利用されています。そうした漠然とした手法では、会社からの情報も本当に届いてほしい人物に届かないことが多いのではないでしょうか。

採用業務は、それ自身が一つのビジネスのサイクルを持っています。商品は会社(仕事)、お客様は候補者となる学生、会社説明は商品説明であり、選考プロセスはカスタマーエクスペリエンスの一部と考えることができます。ですので、マーケティングの手法や考え方の多くは、採用でそのまま利用することができます。そのマーケティングの考え方の一つに、”ペルソナ”というものがあります。想定する特徴的な顧客象を”ペルソナ”として定義して、その”ペルソナ”に対してのアプローチを考えるのです。

採用も同じです。漠としてはっきりしない集団を対象にするのではなく、その中に確かに存在する理想の候補者をできるだけ具体的に想定して、そこにメッセージを届ける必要があります。
そしてそのメッセージは、常に一貫性がないといけません。説明会でも、面接でも、質問への返答でも、いつでも同じメッセージを発信する必要があります。
私はそのためにいつも、採用すべき人材像を対象にコンセプトノートを作成しています。とはいってもそんなに難しいものではなく、以下のような内容を1枚程度にまとめています。

1)採用すべき人材
2)その理由
3)その人材のライフスタイルはどのようなものか
4)その人材は、仕事に何を求めるのか
5)その人材に対して、当社は何を提供できるのか
6)その人材の意思決定に重要なことはいったいなんなのか
7)その人材に届けるべきメッセージ(50字以下)
8)メッセージを補完するいくつかのトピックス(20次以下で4つくらい)

そして、この人物に私たちのメッセージを届けるために、どのような内容でどのようにプロモーションをすべきかを考えるのです。

例えば私が新卒採用を担当したことのあるIT企業では、このコンセプトノートを作成した結果として、かなりチャレンジングでユニークなプロモーションを行いました。

それは、”プロモーションをしない”というプロモーションです。

採用したい人物像:ITに強い興味があり、その力で自ら世の中を変えたいと考えていて、強いパッションとわがままともいえる積極性を持つ。

当時その会社は、大手のコンサルティング企業は外資系のIT企業と競合していました。人物像を探ってっていくと、多くの学生が当社のことをそうした競合企業で聞いたことがわかりました。それら競合企業は人材的には競合していてもビジネスでは強い関係性をもっていたので、そうした競合企業の会社説明会では、ほぼ100%その会社と商品のことを説明します。
そこで、次のような仮設を立ててみたのです。

こうした学生の多くは、大手のコンサル会社やIT企業への説明会へ参加するだろう。そこで共通して話題になるその会社のことを知れば、積極的でパッションのある学生は、自らその会社のことを調べ、たどり着くはずだ。

この仮説にのっとり、ナビには掲載しているが、一切のプロモーションを行わず、検索しなければ見つからない状況にしておきました。
この結果、当初の予想通り応募者数は減りましたが、その会社にとって採用したいと思う学生の割合が非常に多くなりました。
また二次的な効果として、そうした学生が探さなければ見つからないその会社のことを、”知る人ぞ知る会社”というようなニュアンスで回りに広めてくれていたこともわかりました。

この結果、採用の費用は非常に低く抑えることができて、母集団も少ないですからオペレーションの負荷も減り、一方で採用したいと思う学生の割合が高い、という状況をつくることができました。

もちろんこの手法はすべての会社に有効であるとは思っていません。しかし、具体的な人物像を想定することで、可能になった事例であると言えるとは思っています。

全ての学生にとって良い会社というのが存在しないように、すべての会社にとって良い学生というのは存在しません。そういう意味でも人物像を具体的に定義していくことは非常に重要なこととなります。

皆様のご検討をお祈りします。

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