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「数学ギョウザ」


「ABCスープだ、小学校の給食で出ただろ。何?出ていない?地方特有の物なのかな」
 先生の話を聞くところによると、アルファベット型のマカロニが入ったスープがあるらしい。
「そこから私は着想を得た」
 したり顔の先生は、数学記号の鋳型造りを助手である私に手伝わせている。
 プラス、マイナス、ルート、インテグラル、ファイ。
 何でこんな事をしているのかというと。
「それにしても聞いたか?子ども達の言葉を…『数学なんか将来何の役に立つんですかー』だと。君達の周りにある全ての物は数学なしには成り立たないというのに!だから皆が親しめるよう、数学記号の素材を、餃子に詰めて振る舞うのだ」
 餃子の餡を型に嵌めたところで、皮に詰めた段階で潰れてしまうのでは。
 そもそも何で餃子なのか。
「若者は餃子が好きだ!君も好きだろ。できた暁には最初に試食して感想を聞かせてくれ」
 先生は何も分かってない。
 好きな人の前で匂いの強いものは食べたくないのに。


(空白含め410字)

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