説明文指導の本当の意義

マガジン「小学校の国語科の授業④⑤⑥ 説明文編(何を教えるのか)」で、小学校の説明文教材で指導すべきことを述べてきました。
ここで述べてきたことは、「読むこと」領域における読解指導の在り方についてとなります。具体的には、説明文の構造面の指導(「はじめ・なか・おわり(まとめ・むすび)」-「なか」の順序を含む- という構成指導)や表現面の指導を通して、「思考力、判断力、表現力等」をはぐくむということになります。

ここで説明文の指導の根本的な問題を考えていきたいと思います。説明文は「読むこと」領域の教材ですから、書かれている教材の構造を論理的に読み取れる能力(効果的な表現の読み取りも含む)をはぐくめればそれでよいのでしょうか。

このことを考えていくために注目すべきことは、他の2つの領域である「話すこと・聞くこと」「書くこと」に示された「思考力、判断力、表現力等」指導事項です。構造指導(当然、「話すこと」「書くこと」にも構造指導は必要になってきます)を通して育むべき「論理的思考」力に係るもののみのキーワードをまとめると以下のようになります。

「話すこと・聞くこと」領域
第1学年及び第2学年 事柄の順序
第3学年及び第4学年 話の構成(理由や事例を挙げる)
第5学年及び第6学年 話の構成(事実と感想、意見を区別する)
「書くこと」領域
第1学年及び第2学年 事柄の順序
第3学年及び第4学年 段落相互の関係(考えとそれを支える理由や事例)
第5学年及び第6学年 文章全体の構成や展開(事実と感想、意見を区別する)

つまり、「話すこと・聞くこと」「書くこと」領域における構造指導で育むべきものは、②で示した「読むこと」領域の指導事項をほぼ同じであると言えるのです。

このことは何を意味しているのでしょうか。

マガジン「小学校の国語科の授業 理論編」において以下のように述べました。
国語科とは、よりよく日本語が使えるようにするための教科であります。具体的な指導においては、教えなければ身につかないことを知識として教え、教えなくてもできていることを学び直させてより的確に効果的に使えるようにしていくことが重要なのです。

「論理的思考」や効果的な表現に関することは、「教えなくてもできていること」になります。ですから、これらについては、「読むこと」領域において学び直しを行い、より説得力があるように自分の感想や意見を言うための思考や表現の在り方について理解をしていくことになります。
そして、その理解したものを実際に「話すこと」や「書くこと」に活用させて、自分の言いたいことをより説得力があるように表現していくということになります。

つまり、「論理的思考」や効果的な表現に関する指導は、説明文で学んだ論理性や表現方法をお手本として自分の表現に活用していく流れになっていると言えるのです。ここに説明文を学習する意義があるのです。

平成20年度版の学習指導要領では、全教科において「言語活動を充実させること」が強く求められました。そして平成29年度版の現行の学習指導要領では、そのますますの充実が求められたのです。
なぜなら、各教科の目標は言語活動を通して達成されるからなのです。

この各教科の目標達成のための言語活動のほぼ全ては(100%と言ってもよいでしょう)、「論理的思考」を基にしたものとなります。例えば、「話すこと」ですと、スピーチや話合い、討論、プレゼンテーションなどとなり、「書くこと」ですと、新聞やポスター、観察文や紹介文、提言書などとなります。

極論すれば、各児童生徒が各教科の目標達成ができるかどうかは、説明文で学んだ論理性や表現方法を、いかに自分のものとしているのか、いかに能力として確実に身につけているかどうかにかかっていると言えるのです。

各教科における目標達成のための言語活動ができる力を育成するのが、国語科教育における説明文指導となるのです。

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