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映画『世界の終わりから』

 2週間後に世界が終わるとしたら、あなたならどうするだろうか。
 しかも、あなた次第で世界が終わるのを止めることが出来ると言われたとしたら。あなたの夢に基づいた占いによって。

 世界の全てを記録した書物の記述が2週間後の日付で終わっていることを知らされる。その書物に書かれた文字は、あなたが夢で見たことを語ると書き換わる。つまりあなたは歴史を変え未来を変えることが出来るというわけだ。

 ただし、あなたは幼い頃に両親に先立たれ、育ての親となってくれた祖母も亡くしてしまったばかりだ。孤独に苛まれ誰も信じられない境遇のあなたが、世界を救える能力があると言われたところで救いたいと思うだろうか。あるいはむしろ世界など無くなってしまえば良いと思うだろうか。

 終末が近づいた世界を救うというストーリーはこれまでも多くあった。そうした物語では世界を救う存在はヒーローとして称えられる。
 しかし、この映画の主人公はヒーローどころか、お前がいるせいで世界が滅ぶと責められるのだ。そんな絶望の中であなたなら何が出来るだろうか。

 世界が終わるという視点から現在を俯瞰することによって、生きている意味を再確認する物語になっている。人は誰しも最後には死を迎える。そこからは誰も逃れられない。でも、どうせ死ぬのだからどうでもいいということにはならないのはどうしてだろうか。多くの人が自暴自棄にならずに生き続けるのはなぜだろうか。
 どうせ最後は死ぬとしても、そこまでの道のりをただ運命に任せるのではなく自分の力で切り開く力が人にはある。そうやって切り開いた道は常に世界に通じる。つまり人は世界をつくることが出来る。そんな勇気を貰えた映画だった。

 劇中、高校の物理の先生として登場する岩井俊二が語るのは、アインシュタインの相対性理論。これが物語の伏線になっている。

おわり


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