常軌を逸した少女たち

　Ｚガンダムには「強化人間」という特別な訓練を受けたパイロットが登場する。人工的に作られたニュータイプである。特に、フォウ・ムラサメとロザミア・バダムの存在は際だっており、主人公のカミーユをはじめとする人々に、大きなインパクトを与えた。
　一言でいうと、フォウ・ムラサメとロザミア・バダムは、異様な少女である。突拍子のない言動に周囲は振り回され、物語の中では、カミーユ以外に共感する者はいなかった。見ている者にとっても同様で、彼女らのインパクトは「共感」ゆえのものではなかったのだ。言葉は悪いが、「なんてひどく壊れてしまった人だろう」という、そういうものであった。
　最近になって、こういう「壊れた」人たちが身近に存在していることに気付いた。リストカットなど、自分で自分自身を傷つける、いわゆる自傷行為をする人たちである。こうした人の事情を通して、逆に、彼女たちが壊れざるを得なかったわけが、だんだんと理解できるようになってきたように思う。
そこで、この項では悲劇的な運命をたどった二人の少女の「そうしなければならなかった心理」について考察してみよう。