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詩|こどう

消灯時間のすぎた 病室にて
眠り入ろうとするのを
さまたげるのは 誰

どん どん どん どん
空が鳴る
一夜かぎりの夢がひらく

どん どん どん どん
観光客に いっとき 忘れさせるために
みずうみ対岸の夜空は
きっと ぱあっ と輝いている

どん どん どん ぱあっ
部屋から見えない花火の色は どんなだろう
その明るい お祭り色

毎晩 入れかわる 一夜の夢たち
寝床で わたしは 毎日
その代償となる現実たちが
こちらへ無造作に投げられてくるのを
聞いている

きびしく
次から次へと 捨てられ 飛んでくる
忘却たち

暗がりの淵で
とん とん とん とん
ほら 耳をすませば 心臓の音

呼吸を みずうみのように
やさしく 受け止めている
 
 
(詩誌『北極星』第58号 収録)

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