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【読書記録】3つのステップで成功させるデータビジネス 「データで稼げる」新規事業をつくる_後編

参考になった書籍についてまとめました。個人的な抜粋と感想です。
興味を持たれた方は書籍全体をお読みください。

丁寧にまとめすぎて、データビジネスについての背景で前回は力尽きてしまいました。この後編が重要です。

データビジネスのアイデアをつくるための思考法

・データの価値の再定義
社内に蓄積されたデータ分析すると、どんなことが分かるのか?
データから得られるインサイトの抽出。

・データの使い道の発見
自社で所有するデータを「誰の」「どのような課題」の解決に活かせるのか?
インサイトを活かした課題解決策の検討。

本書を参考に編集しました。

本書のコラム「自社が所有するデータを「外販」すべきか」にも記載がありましたが、データそのものではなくデータを活用することで解決するものを明確にして初めて対価が支払われるというのが大原則だと思います。

本来はデータを買う側が活用まで設計して、このデータが欲しいと探しているはずですが、そんなことはほとんどありません。売る側も買う側もなんとなく大量のデータがあるといい感じになりそうっていう解像度で話が進むことが多いように感じます。そのために、私のようなクライアントワーク多めのデータサイエンティストやデータスチュワードの需要があるのですが・・・。

「データの価値」と「データの使い道」を混同しないように!って書いていましたので、きっちり分けてまとめていきます。

データの価値:データの新たなインサイトを体系的に抽出する

「単位」と「タイミング」の観点で整理。

①個のデータ=個々のデータを分析すると分かること
②集合したデータ=まとまりあるデータとして分析すると分かること
③グループ化したデータ=データを特徴ごとに類型化することで分かること

①瞬間のデータ=データが発生した瞬間で分かること
②定点のデータ=定期的にデータを分析して分かること
③推移のデータ=データが蓄積され時系列となって分かること

この2軸で棚卸した保有データに対して、比較、内訳を分析、通常では考えられない傾向を探すといった整理の仕方が紹介されています。ここでも、使い道に引っ張られずにあくまでデータから「分かること」についてブレインストーミングすることが重要ということです。

データの価値:データを組み合わせてインサイトを強くする

データビジネスの成功例を見てみると、既存事業から収集されたデータを利用する事例はそれほど多くありません。多くの場合、新たに展開しようとしているビジネスに特化して収集されたデータが活用されています。この現状からも明らかなように、保有データを整理して「このデータをどのように活用するか?」と考えるアプローチだけでは成功へと繋がりにくいのだそうで、既存データを活かしたインサイト導出には、「掛け合わせ」という観点が有用であるということです。

データの使い道の発見:データの使い道を検討する

データの価値パートで、データの価値を再定義し、インサイトを抽出、他データとの組み合わせを検討していました。このパートではその次の段階である使い道の発見について整理されています。

まず、データが解消しやすい課題の5つのパターン

①情報の非対称性の解消
バリューチェーンにおける需要ー供給の双方に対しての情報の可視化やマッチング

②合理的でない・根拠ない手段により発生する無駄の削減
業務運用や判断基準の可視化

③既存手段よりもデータを活用した手段によるコスパの改善
「同じパフォーマンスでコストを下げる」または「同じコストでパフォーマンスをあげる」

④きめ細やかな個別対応の実現による最適化
「従来の提供サービスを細分化する」または「サービス利用の敷居を下げる」

⑤データに基づきアクションの頻度を高めることによる機会損失の削減
「本来得るべきだった収益の損失」または「本来は不要だったコストの発生」の削減

本書を参考に編集しました。

なんとなく理解できたような気もしますが、ピンときていません。
この5つのパターンに加えて、4つのレベルを組み合わせたマトリックスを作成し、どのようなビジネスがあるのかを図示してくれています。その図がわかりやすいです。マッチングアプリ、スコアレンディングetcがどの範囲に当たるのかが記載されています。なんとなくの感じだけ貼り付けておきます。

こんな感じのマトリックス図です。

データビジネスを事業化するための思考法

ビジネスモデルを策定する

ビジネスモデルの定義から入っています。丁寧です。
あくまで、策定方法を整理すること目的にしているため、以下の④ポイントに絞って解説されていました。

①誰に サービスの利用者は誰か?
②どんな課題を 解消すべき課題は何か?
③どうやって どうサービスを提供し、課題を解決するのか?
④誰がお金を払うのか 誰が費用を負担するのか?
⑤お金とサービスの流れ サービスとお金はどのような流れになるのか?

①〜③について、まずは現在課題に対してとられている解決方法を明確することが重要。

どんなに革新的なアイデアでも、「今支払っているお金の用途」以外の、新たな用途への支出を企業や消費者に促すことはかなりハードルが高い

これって新しいビジネスを考える際によく見落とされがちな要素だと思います。時間と同様に、資金も限られたリソースであるという認識を常に持つことが重要と思います。

④と⑤については4パターンに絞れるようです。勉強になります。

マッチング型販促・広告型、BPO型、サービサー型

あとコラム「ネットワーク効果を最大限に引き出す「両面市場」を狙え」も勉強になりました。現在巨大な利益を生んでいるサービスのほとんどがこのネットワーク効果(製品やサービスが利用者数に伴って価値が増加していく効果)を生みやすい構造になっていますよね。

訴求価値を磨き上げる

  • 現状維持バイアスをいかに克服するか

    • 持続的イノベーション(企業が市場のニーズを満たすという目的のもと、自社の製品の性能を向上させるために行うイノベーション)

    • 破壊的イノベーション(今あるサービスやソリューションを低廉化したり機能を絞ったりして、それを利用できていない顧客へと広げ、新たな市場を開拓するイノベーション)

特に破壊的イノベーションはデータ活用との相性がいいらしいです。

低廉化型、成果提供型、レコメンド型が具体例を交えて紹介されています。

差別化要素を磨き上げる

データビジネスのビジネスモデルはある程度パターン化できるので、市場参入後には差別化戦略が重要となってきます。その差別化戦略は、マッチング型、販促・広告型、BPO型、サービサー型のいずれのパターンにおいても

データビジネスにおける他者との競争は、「いかに早く『提供価値を高める要素』を獲得し、価値向上のはずみ車を回せるか」の競争であるとも言えるだろう。

ということで、量に依存しています。マッチング型であれば利用者数、販促・広告型であればユーザー数、BPO型であれば導入数、サービサー型であればクライアント数という感じでネットワーク効果が前提になってくる印象を受けました。というか、これを前提にしておかないといけないと感じました。

また、本書でははずみ車を回すために関係性アセット(既存サービスの取引先との関係性、既存市場での他社との関係性)をいかに活かすかが重要と書かれていました。昨今、M&Aとか増えてきているのにも関係するのかもしれませんね。

事業として儲けを出すための思考法

データビジネスを実際に立ち上げる

はずみ車の話にもあるように、データビジネスはスピード勝負です。しかし、必要なアセットは外部企業との関係性、データ、データ分析技術、ビジネスケイパビリティ。これまでデータビジネスを実施していない企業でこれらのアセットがすぐ準備できるところはないでしょう。

そこで、本書で紹介されているのが、スタートアップ・エンハンスアプローチとレガシー・DXアプローチです。いづれも外部連携による推進です。

事業をスケール化する

立ち上げはゴールではなく、スタートです。以上。
いわゆるイノベーター理論の登場です。この理論は、スケールするためには初期顧客とは異なる属性の顧客に受け入れられる必要がある(キャズムを越える)ということを示しています。導入と継続のハードルを克服する必要があります。そのためのアプローチとしてローエンド化アプローチとホールプロダクト化アプローチが紹介されています。

これらのアプローチを同時進行するのはきついです。どちらが扱うビジネスにとってインパクトが大きいか見定める必要があると痛感しています。

データビジネスの持続的な成長を実現する

データビジネスは、データの陳腐化、規制やルールの流動性、他者からの模倣などの理由から「自発的に変わり続けることが要求される」ということです。いわゆるアジャイル開発との相性がいいと考えています。データビジネスに限らず作って終わりのプロダクトはほぼないでしょう。

あと、キーワードとしては「競争から共創へ」ということでした。データ資源はネットワーク効果を代表されるように使えば使うほど増えて、サービス品質も上がっていくという特性を持っています。この特性から単体での継続は難しくどこかのタイミングでエコシステムを形成するという戦略に切り替えることが必要かもしれません。シェアリングエコノミーという概念もこの流れから発生したということです。そういう意味でも既存のプラットフォーマーたちは強いですね。

データビジネスの実践ケース

ここからは、業界ごとの事例をまとめています。

小売業、インターネット広告、医薬・医療、教育、スポーツ、製造業、自動車、公共、国家政策・安全保障

の各事例がまとまっていますので、是非全例をお読みください。
ここでは、医薬・医療、スポーツ、公共を取り上げたいと思います。

医薬・医療:予防から予後まで顧客に価値を提供する

患者中心へ

・ビヨンド・ザ・ピル:医薬品を投与する前の段階である「予防」や、治療後の「予後・介護」も組み合わせた総合的なソリューション

・アラウンド・ザ・ピル:予防から予後まで、患者やその家族、ケアに携わる人材のサポート

キーワード

・データドリブンプラットフォーム
・パーソナライゼーション
・カスタマーエンゲージメント

本書を参考に編集しました。

医療分野はここに閉じたデータ管理が主流でしたが、最近は共通フォーマットによるDX化も進みかなりデータが集約されてきた印象があります。この先は活用するフェーズだと思います。本書で記載されていたキードライバーについてさまざまなサービスが出てきているなという印象です。

スポーツ:「試合観戦」を超えた権利ビジネスへ

権利ビジネスへ

・試合データ販売ビジネス
・ファンタジースポーツへの販売ビジネス
・NFT(非代替性トークン)
・スポーツベッティング

キーワード

・ウェルビーイングプラットフォームビジネス
・データガバナンス

”みる”部分は権利ビジネス、”する”部分はウェルビーイングも含めたプラットフォームビジネス。両者ともに多種多様のデータが集まってくるので、ガバナンスを整備しつつ、活用できるのかが鍵。「日常と非日常を組み合わせたウェルビーイングプラットフォームビジネス」というパワーワードも出ていました。非常に伸び代のある分野だと感じました。

公共:求められる民間の活力

デジタルへ

デジタル社会の実現に向けた重点計画
誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を

キーワード

マイナンバー
公共サービスメッシュを中心としたトータルサービスデザイン
・官民共創のエコシステム
・オープンデータ化とEBPM(Evidence-Based Policy Making)

データの標準化・一元化が今後も進んでいくと考えられます。保護と活用のバランスを調整しながら民間サービスの共創が推進されることが予想されます。私の関心領域の健康医療行政については、EHR(Electric Health Record: 病院の中の健康データ)とPHR(Personal Health Record: 病院外の健康データ)の活用が注目されています。

EHRについては、現在でも次世代医療基盤法の改定により研究分野での利便性は高まっていると思います。さらに、医療DX令和ビジョンでも描かれている全国医療情報プラットフォームの運用(2025年度運用開始計画)が開始されると一気に民間での活用が進むと考えられます。

PHRについては、すでにさまざまなプレーヤーが独自に取得し始めています。これが標準化及び一元化できた場合は個人最適な健康サービスが提供されると思いますが、ハードルは高いように思えます。

ただし、EHRやPHRの所有権はあくまで本人なので、マイナンバーの普及などで個人からアクセスしやすい状態になると考えられますので、官民サービスの個別最適化の実現もそれほど遠くない未来に訪れるかもしれないと私は考えています。

感想

ちょっと長くなりました。

データは癖のある資産です。使いこなすためには、その専門職であるデータサイエンティストやアナリスト、データエンジニアがデータビジネスまで見据えた動きをする必要があると私は考えています。そのため、このようにデータビジネスを体系的にまとめている本は非常に参考になりました。

幸いなことにヘルスケア分野の事業会社でデータサイエンティストとして働いています。立ち上げは経験できたので、次はスケールのところでどうやってデータサイエンティストとして価値を出せるのかに挑戦していきたいと思います。

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