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コロナ禍でどの年齢層の雇用が失われたのか?失われていないのか?

受講生のご質問から気づいたこと

今月から、東京都・世田谷区主催の連続講座の講師をやらせていただいております。経済統計を通じて日本経済を観察していこうという内容で、本日は労働力調査をテーマとしました。その過程で、2021年1月10日に書かせていただいた下記のnoteも紹介しました。

このnoteでは2021年4~9月期の前年同期比に注目していたのですが、本日の講義後のQ&Aコーナーで、「その後、中堅層の深刻度は高まっていないのか」という御尤もな質問が出ましたので、2021年平均と2019年平均の比較を行ってみました。同様な傾向が確認できたとともに、私がうっかり見落としていたことにも気づかされました(汗)

落ち込みが大きいのはやはり35-44歳

役員を除く雇用者の2021年平均を2年前の2019年平均と比較したのが以下の図です。最大の落ち込みは、やはり35~44歳で2019年平均と比べて5.2%減少していました。うち、正規の職員・従業員の寄与がマイナス2.2ポイント、非正規の職員・従業員の寄与がマイナス3ポイントでした。次いで15~24歳の落ち込みが大きいのですが、在学中のものを除くと落ち込みは小さくなります。45~54歳、55~64歳、65歳以上は増加しているのも同様でした。

人口要因を考慮に入れると違った姿が…

ここまでデータを整理したところで、はたと気づきました。

もしかしたら人口構成の高齢化によって、年齢階層別の動きが現れているのではないか?若年層、中堅層は人口が減っているから、それに合わせて雇用者が減り、中高年層には逆の現象が起きているのではないか。

そこで、雇用者数を各年齢層の人口で割り、2021年の比率と2019年の比率の差を観察してみました。前年比でみると大きく減っている35~44歳、逆に増えている45~54歳は、人口に対する比率に注目すると変化していなかったことがわかりました。一方、55~64歳は人口比でも大きく上昇しており、企業の定年延長、継続雇用の拡大などが影響しているのではないかと推察されます。15~24歳は在学中の者を除くと雇用者数の人口比0.2ポイント程度のマイナスで、コロナ禍が学生バイトに大きな影響を与えたことが再確認できました。
 また、65歳以上以外のすべての年齢層で、非正規雇用の人口比が低下し、正規雇用の人口比が上昇していることが確認できました。必ずしも同じ人が非正規から正規に移ったわけではないかもしれませんが、正規雇用の比率が高まっていることは喜ばしいことではないかと思います。

ちなみに、冒頭で紹介した世田谷区の連続講座は「世田谷市民大学」という名前で運営されています。熱心な受講者が多く、授業後には鋭い質問を投げかけられて、私自身も勉強させていただいております。依頼いただいている12月初旬までしっかり講師を務めたいと思います。


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