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「103万円の壁」は、いつから103万円だったのだろう?

 このところ、「年収の壁」の話がよくなされてますね。本日(9/25)の日本経済新聞電子版には、政府が年収の壁への対応策をまとめたことを報じています。この年収の壁のうち、最も金額が低いのが103万円の壁。この103万円の壁って、いつから103万円だったのでしょうか?



103万円の壁は、所得税がかかるボーダーライン

 電子版の記事にもあるように、年収が103万円を超えると本人に所得税がかかります。さらに、学生のように親の扶養家族になっている人の年収が103万円を超えると、親の所得税の計算において扶養控除が減り、親の所得税が増えてしまいます。私も3人の息子たちが学生の時には、「あまりバイトで稼ぎすぎるなよ」と注意してました(笑)

基礎控除+給与所得控除の最低保障額の合計

 なぜ103万円なのか。それは、所得税の「基礎控除」(現在48万円)と「給与所得控除」の最低保障額(現在55万円)の合計が103万円だから。雇われて働いている人であれば103万円までは、「基礎控除」と「給与所得控除」の最低保証額のおかげで、税金の対象となる所得(課税所得)がゼロ円で済み、所得税がかからないというわけです。
 基礎控除は、雇われている人でも自営の人でも適用されますので、生活をするうえで最低限必要なおカネという趣旨があるのでしょうね?さらに、自営の人は、基礎控除だけではなく経費を引いた残りが課税所得になるわけですので、雇われている人に適用される「給与所得控除」の最低保証額は、働くうえで必要な最低限必要な費用とも解釈可能です。
 以上を踏まえると、103万円は、働き、生活するうえで最低限必要な費用ということになりましょうか?(なんか少ない気もしますが…)

1995年に103万円に引き上げて以来、28年据え置き

 では、いつから103万円だったのでしょうか?「財政金融統計月報」(財務省)は毎年、「租税」に関する特集を組んでいます。そこには税制に関する様々な資料が載っているのですが、「基礎控除」や「給与所得控除」の金額の推移などの情報も見ることができます。
 それをたどってみると、「基礎控除」と「給与所得控除」の最低保障額は1995年から103万円(基礎控除38万円+給与所得控除の最低保障額65万円)に引き上げられて以来、28年間据え置かれていることがわかります。2020年に基礎控除が10万円引き上げられましたが、給与所得控除の最低保障額が10万円減らされたので、103万円の壁に変わりありません。
 ちなみに、それ以前は、以下のように時々改定されていたようですね。

 1989~1994年 100万円(=35万円+65万円)
 1984~1988年  90万円(=33万円+57万円)

 1983年以前については、財政金融統計月報をご覧ください~

103万円の壁自体を引き上げる話がなぜ出ないのだろう?

 私自身は、税制やその歴史に詳しいわけではなく、過去の基礎控除や給与所得控除の最低保障額の引き上げの背景を正確に知っているわけではありません。しかし、働き、生活するうえで最低限必要な費用という私の理解が間違いでなければ、消費者物価の上昇が影響しているのではないかと思われます。
 年平均の消費者物価指数(2020年=100)を確認すると、1984年の82.2から1989年は86.9と5.7%上昇しています。この間で90万円の壁が100万円の壁へと1割以上増えました。さらに、1995年の消費者物価指数は95.9と1989年から10.3%上昇しましたが、この間で100万円の壁が103万円の壁へと3%増えました。
 そして、2022年の消費者物価指数は102.3。1995年の95.9から6.7%上昇しています。デフレ下にあったとはいえ、消費税率の引き上げもあり、生活コストは確実に上がっています。
 「基礎控除」と「給与所得控除」の最低保障額を引き上げて、103万円の壁自体を引き上げる話がなぜ出て来ないのでしょうか?これらの引き上げは、幅広い層への所得減税効果もあると思うので、悪くない話だと思うんですけど~。

#日経COMEMO #NIKKEI


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