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「短期滞在」入国外国人、2019年の8割水準近くに~クルーズ回復はまだまだ

 少し前のことですが、観光庁長官が「訪日旅行者、年内にもコロナ前水準回復の見通し」と発言したことがニュースになっていました。2023年7月の訪日外客数が232万人となり、新型コロナの感染拡大前の2019年との比較で77%の水準まで回復したことを受けた発言です。月単位でみれば年内には2019年の水準を超える月が出てくるということでしょう。
 一方、かねて書かせていただいているように訪日外客数には旅行者以外の入国者が含まれています。そして、旅行者が中心と考えられる「短期滞在」資格の入国外国人数をみると、回復のテンポはより速いものになっているように見受けられます。以下、確認してみましょう。

「短期滞在」は90日以内の滞在をカウント

 出入国管理統計では、90日以内の滞在予定で入国する外国人の数を「短期滞在」として示しています。コロナ禍の2022年は、この「短期滞在」(287.2万人)の内訳は、観光(225.4万人、短期滞在全体の79%)、商用(37.7万人、同13%)、親族訪問(19.9万人、同7%)などとなっていました。しかし、2019年には観光だけで2537.1万人、短期滞在の94%を示していました。観光需要が増えれば、顕著に増えていくデータと考えられます。ちなみに、2021年の「短期滞在」はわずか7.2万人、観光目的はゼロ人でした。

2023年6月において、2019年6月の77%の水準まで回復

 この「短期滞在」の人数は、当該月が終わってから2ヵ月弱で公表される「月報」で公表されます。残念ながら、訪日外客数が公表される1ヵ月弱より遅いため、あまり注目度は高くないですね。訪日外客数とほぼ同時期に公表される「出入国管理統計」の速報値で公表してくれると良いのですが…
 ということで、現時点で最新のデータは2023年6月。下の図は昨年(2022年7月)から直近までの「短期滞在」資格で入国した外国人数と訪日外客数の推移を示したものです。
 「短期滞在」の入国者数は2022年7月には2019年7月のわずか3%しかいませんでした。それが水際規制の緩和が始まった2022年10月から上昇し始めます。2023年6月には194.5万人、2019年6月の77%まで回復しました。2023年7月には8割に載せるのではないかと思われます。
 2019年同月比で訪日外客数と比較すると、2022年10月までは訪日外客数の方が多かったのが、それ以降は「短期滞在」の入国者数が上回っています。訪日外客数には観光以外の入国者も含まれているため、観光客の急増ぶりが「短期滞在」のデータの方がより強く反映しているのでしょう。

クルーズ船観光客は、2019年水準には遠く及ばず

 「訪日外客数」には入国者数にはカウントされないクルーズ船の観光客も含まれます。年単位でみると、2015年から2019年の4年間、訪日外客数は入国外国人数全体を上回ってましたが、この主因がクルーズ船の観光客です。
 「出入国管理統計」では「入国審査・在留資格審査・退去強制手続等」の中で、こうしたクルーズ船客の動向を把握しています。以下は、そこに掲載されている「船舶観光上陸」を許可された人数をグラフ化したものです。
 2023年1月、2月はゼロ人が続きましたが、3月から3000~4000人となり、6月は1万3381人と急増しました。しかし、2019年6月と比べるとわずか6%に過ぎません。2019年は年間で202.6万人も船舶観光上陸が認められたためです。
 「訪日外客数」に観光客以外が含まれているにもかかわらず、2019年対比の回復が「短期滞在」より若干遅いのは、こうしたクルーズ船の観光客の回復の遅れも一因かもしれません。

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