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交易条件改善の追い風なくなる~2023年9月の貿易統計

 昨日(10月19日)、2023年9月の貿易統計(速報)が公表されました。いつものように季節調整値で観察すると、2023年9月の貿易赤字は4ヵ月連続でほぼ横ばいになっています。細かくみれば、若干の赤字縮小(8月:0.55兆円の赤字→9月:0.43兆円の赤字)です。


輸出入金額が揃って増加

 季節調整値で見ると、2ヵ月ぶりに輸出金額、輸入金額ともに前月比で増加しました。輸出金額は前月比7.2%増、輸入金額は前月比5.4%増であり、久しぶりに輸出入が揃って増加する姿が観察できました。

実質輸出は増加も、6、7月の水準には及ばず

 実質輸出は前月比4.6%増。8月に大きく減少し「輸出持ち直しは幻だった?」と悲しくなったのですが、なんとか横ばい圏内を維持しています。ただし、2023年6月,7月の水準には及びませんでした。四半期単位でみると7~9月期は4~6月期に比べて0.8%増とわずかな伸びにとどまってます(ちなみに、4~6月期は前期比2.4%増でした)。
 実質輸入は前月比2.5%増。直近のピーク(2022年10月)から続いていた減少傾向から、横ばい傾向に移行しているかもしれません。四半期単位でみると7~9月期は4~6月期に比べて0.1%減とほぼ横ばいです。ちなみに4~6月期は前期比1.0%減で、「輸入減でGDPが増えた」と騒がれましたね。

交易条件改善による追い風は無くなった?

 金額ベースと実質ベースの動きの違いは輸出入物価の動きの違いによります。円ベースでみた輸出物価は前月比1.7%上昇しているのに対し、輸入物価は2.1%上昇し、久しぶりに輸入物価の上昇率が輸出物価の上昇率を上回りました。円安の影響は輸出、輸入物価の両方の押し上げに働きますが、契約通貨ベース(ドル建てなど)の輸入物価の伸び(0.6%上昇)が輸出物価の伸び(0.5%上昇)を上回ったためです。このため、2022年9月を底に改善傾向にあった交易条件(=輸出物価÷輸入物価)が悪化しました。
 いよいよ、交易条件改善による貿易赤字縮小という追い風がなくなりました。実質輸入の減少傾向が止まったとすると、今後は実質輸出が回復していくかどうかに貿易収支の動向は左右されそうです。

地域別・財別の実質輸出の動向は

 10月24日に公表された財別や地域別の実質輸出の9月分を見ると、すべての地域で前月に比べて実質輸出が増加しました。一方、四半期単位のグラフを見ると、米国・EU向けが緩やかに増加する一方で、中国・アジア向けが減少傾向という好対照な動きになっています。
 財別でみると9月の前月比は情報関連を除いてすべての財が増加しています。四半期単位の以下のグラフを見ると、自動車関連以外は弱含みという状況です。自動車の輸出増には、これまで半導体不足などで生産が出来ず、輸出も出来なかった反動もあると言われていますので、今後の動きを注視したいと思います。


#日経COMEMO #NIKKEI


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