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真の愛を知る少年の物語 映画「天才スピヴェット」

 「天才スピヴェット」は、2013年公開の映画。
 監督は「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ。

【Story】

 アメリカ西部の田舎に暮らす10歳の少年スピヴェット。
 スピヴェット少年は、異常なまでに科学への好奇心があり、論文が科学雑誌に掲載されるほどであった。
 一方、スピヴェット少年の二卵性双生児の弟であるレイトンは、子供らしい子供で、両親から溺愛されていた。
 ところが、ある日、スピヴェット少年とレイトンが父の銃で遊んでいると、銃が暴発し、レイトンは死んでしまう。
 途方にくれる両親。

 弟の死後、スピヴェット少年が、こっそり学術機関に「永久運動」に関する設計図を送ったところ、権威ある賞に選ばれ、その知らせを電話で受ける。
 スピヴェット少年は、賞を受け取るため、家族に内緒で家出し、貨物列車に隠れて乗り込み、ワシントンを目指す。

【愛されなくても愛する】

 スピヴェット少年が家出をしたのは、自分を愛さない両親への反発などではなかった。
 家を出る際、「心配しないで。最高の家族だ。」とメモを残していく。
 スピヴェット少年は、愛されなくても、母を愛し、父を愛し、科学を愛したのだった。

 心理学者であり、哲学者のアルフレッド・アドラーは、見返りを求めない無償の愛こそが真の愛であり、その結果、他者が自分を愛するかどうかは、「他者の課題」とし分離すべきだと語った。
 正にスピヴェット少年の行動はアドラーの提唱する生き方そのものであり、そして映画の最後で家族も少年の真の愛に応えるのであった。

【映像美】

 「アメリ」でもそうだったが、ジャン監督の映像は冒頭から最後まで「美しい」の一言。
 美しいだけでなく、テンポが良くて小気味いい。
 アメリカの銃社会や、人を食い物にするマスコミへの痛烈な皮肉も込められれている。
 美しさと切なさと家族愛で、後味最高の映画。
 おすすめです。


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