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お菓子作ったことなくても開業できちゃう「食品衛生責任者」に疑問 マフィン騒動に見る「食の安全」議論

2023年11月に都内で行われたアートイベントにて、会場で販売されたマフィンを購入した複数人に健康被害が発生するというアクシデントが発生しました。この一件を発端に、X(Twittert)を通じて、マフィンを販売していた業者による杜撰な衛生管理状況を示す情報が次々と拡散され、炎上状態になっています。

Xで食品に関する問題が拡散されると、食品衛生に関するさまざまな知見・体験談も同時に投稿され、ユーザーにとっては「食の安全」について考えるきっかけにもなります。

ツイートまとめサービスのTogetter(トゥギャッター)が解説する「3分くらいで分かる週刊X(Twitter)トレンド」、今回は「食の安全」について掘り下げます。

食品衛生に詳しい人から見た原材料表示の粗

問題のマフィンは添加物不使用、砂糖を減らして作られていることが謳われており、食中毒が発生した主な原因として「イベント期間中数日間に渡って販売する間に腐敗を防ぐことができなかったのではないか」と推測されています。

Xでは実際にイベントで該当商品を購入した人による実物の写真も複数投稿されました。そんな中、問題のマフィンの包装に記されていた原材料表示について、飲食店関係者と思われるXユーザーが表示内容への不備を指摘する投稿を行い、注目されました。

そのユーザーは、「原材料表示一覧は食品のパッケージで一番気をつかうといっても過言でない」としつつ、問題のマフィンについては「かなり雑な書き方をしている」と投稿。その根拠として、「主原料である小麦粉の原産地の表示がない」「原材料表示に本来必要ない”水”の表示がある」といった点を指摘しました。

また原材料表示への疑問だけでなく、「砂糖と添加物、どちらも減らすとカビが発生しやすくなる」「Xに投稿されているマフィンの外観にカビなどは確認できないことから、材料として使われていたバナナや栗といった食品に菌が付着していた可能性が高いのでは」といった、製造過程に問題があった可能性も挙げています。

事情に詳しい人による投稿によってどんなポイントに問題があったのかをより理解しやすくなる流れは、Xならではです。

1日で取得できる「食品衛生責任者」の要件に疑問

いち業者によるアクシデントが、食品を取り扱う業界全体に関わる根本的な議論に発展することもあります。

件のマフィン製造者による食品衛生上の管理不備の可能性が複数挙げられる中、本業パティシエのXユーザーが「『食品衛生責任者』の取得要件を見直すべきでは」と問題提起しました。

「食品衛生責任者」は、飲食に関わる事業を開業する上で必須となる資格ですが、そのユーザーは「簡単な講習を1日受ければ取得できる」という資格取得のハードルの低さと、「(食品衛生責任者の資格があれば)極端な話、一回もお菓子や料理を作ったことがない人でも開業できちゃう」という点に疑問を投げかけています。

その上で、「資格取得方法の見直し、取得者への定期的な講習の強制参加や、資格保持のための再講習や再試験、それに従わない者への資格剥奪」といった例をあげ、要件を厳しくする必要性を訴えました。

この投稿に対して、実際に食品衛生責任者の資格を取得したユーザーからも「マジで『これで取らせていいのか?』となった」「(取得にあたり)簡単な小テストをやるけどかなり簡単」「こんな内容で責任者任せられるなんてと不安になった」といった取得ハードルの低さに関する言及が相次ぎました。また、一連の投稿で事情を知った一般ユーザーからは、「そんなに簡単に取得できてしまうんだ」と驚く反応も複数出ています。

一方で、食品衛生責任者を必要とする業種の幅広さを引き合いに「(取得要件を見直す場合は)製造販売部門と既製品取り扱い部門とかで分けたりしないとコンビニ的な小売店が消える…」「資格取得のハードルを上げるというよりは、イベントなどで食品販売する際の条件を見直して欲しい」といった立場の声も見られました。

さまざまな知見が素早く共有・拡散される意義

マフィンでの食中毒が注目を集めたことをきっかけに、衛生管理の大切さ、食品表示法の詳細、添加物の役割、食中毒が発生した時の保健所への対応といったさまざまな「食の安全」に関する知見が共有されました。こうした知見が「この短時間で周知されていることがすごい」と投稿したXユーザーの感想に共感が集まっています。

「この事件のおかげか、食べ物の保存方法がめちゃくちゃ勉強になった」「本来あってはならないことだけど、知られてなかったことが知られるのはよかった」「事件と周知はセットな感じ。『この機会にみんなに知識を』みたいな役立つ行動できる人たちの存在がありがたい 」といった反応を見るに、事情に詳しい人からの知見の発信を有難いと感じるXユーザーは少なくないようです。問題が起きたことによって、食品の製造・販売する立場の人だけでなく消費者にとっても食品衛生について考え直すきっかけとなったと言えるでしょう。

もちろん、「食の安全」が揺らぐ出来事は起きてはならないことですが、もし不安に感じることがあった時は、Xの過去の事例をたどるとリスク回避のヒントが見つかるかもしれません。

以上、Togetterがお送りする「3分くらいで分かる週刊X(Twitter)トレンド」でした。この連載は毎週月曜日に更新。これからもTwitterから見えた興味深いトピックを解説していきます。記事への「スキ」「オススメ」マガジン登録をお待ちしています。


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