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レーザー治療の変遷とレーザー光の光感受性物質を応用した最新歯周治療法(Periowave)ーM.I.D.の立場からー②東邦歯科診療所HPより

 Periowaveは、その特徴として人が感知できないほど微弱なエネルギーのレーザー非熱性(Cold Laser)であり、臨床家にとっても患者さんにとっても、安心してPerio、Endo、Implentの疾患及び予防に使用できる本格的な歯科用a-PDTである。医科におけるPDTは、腫瘍細胞や腫瘍組織内の新生血管の内皮細胞内に取り込まれた光感受性物質にレーザー光を照射させることにより、活性酸素が発生され、この活性酸素に腫瘍細胞や組織が傷害を受けて壊死脱落し、腫瘍を消失させる治療である。可能な限り正常な組織を温存し、身体の機能や形態を損なわないことが目的であり、歯科におけるMIDの考えと共通する。

 これまでのPDTは、光感受性物質の標的とする細菌や組織内有害物質に対する選択性が小さいことが課題であったが、Periowaveはこれらの諸問題を解決している。口腔感染症に対するPDTに関する基礎研究は、1989年からロンドン大学のMichael教授らの研究グループによって50数編の論文が発表され、本法の臨床効果が実証されている。歯周病は、細菌による感染症であることから、歯周辺の細菌叢とその生産物である炎症性伝達物質の生産をいかに防御し、歯周ポケット内細菌のコントロールが重要である。歯周病を引き起こす細菌を早期に検知し、抗菌処置できれば重症化への進行を止め、初期段階で病変を元に戻すことが可能になり、外科的介入を必要最小限(MDI)にできる。

 Periowaveは、670nmの波長で励起する、220mWの低出力のダイオードレーザーである。その波長に合う光感受性物質を非熱ダイオードレーザーと併用することで、広い抗菌スペクトルを発揮し、スケーリングやルートプレーニングにより取り残した病原体を排除することを目的とする。歯周ポケット内にフォートセンシタイザーの0.01%メチレンブルー色素を含む中性リン酸緩衡液を浸透させる。(Step Ⅰ:Irrigate)この色素は、グラム陰性菌およびグラム陽性菌の細胞壁を構成するペプチドグライカン(糖タンパク)、糖脂質(内毒素)の脂質に特異的に結合する。次に、Periowaveのレーザー光を照射することにより色素が結合した歯周病原細菌は、破壊する。(Step Ⅱ:Illuminate)この色素は、生体の細胞には結合しないためレーザーの照射による侵襲は最小限に抑えられる。

 Periowaveは、多くのバクテリアを不活性化しSRPだけの場合と違って治療後にバクテリアやトキシン(毒素)を残さない。フォートセンシタイザーを使って物理的に細菌を破壊するため、殺菌に抗生物質を使った治療方と違ってバクテリアの抵抗性を刺激することなく即座にグラム陰性菌を破壊する。さらに、抗生物質を使用した場合に起こるアレルギーとか過敏症を発生せず、真菌による日和見感染を起こすこともない。その治癒するのに長期間必要としない。

 Periowaveによる光殺菌法は、従来の機械的なSRPに置き換わる方法ではなく、補完される治療法である。光殺菌法による処置には、根面のデブライトメントが必要不可欠である。多くの症例から、両者を併用した治療により外科的治療や侵襲性のある処置の必要性が減少できる。また光殺菌法は、特に歯周組織再生療法のような歯周外科治療において、根分岐部のようなインスツルメントが届かない部位の殺菌にも適用することができる。

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