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四月には 心を輪にする演出を


金曜、四月から入社されたTさんの
歓迎会が開かれました。

和ふうの、小洒落たお食事処に集まったのは
同じ課に所属する、十人。
年代は色々ですが、全員が女性です。

掘りごたつの個室で、
ひと続きのテーブルに
十人が五人ずつ、向かい合うように座ります。
皆が席に着くと前菜が手早く提供され、
一杯目の飲み物が行き渡りました。

「Tさん、これからよろしくお願いします。
では、かんぱい」
上司の音頭のもと、
会は、穏やかなムードで始まりました。


いつも席を隣に仕事をしている仲間でも
こうして、全員そろっての食事会は
なかなか機会がありません。

毎日キリッと仕事をしている上司も
今日ばかりは、やや砕けた様子ですが、
さすがにTさんは
まだ肩に力が入って、緊張気味のようです。


あたたかい料理が次々に運ばれ、
数人が二杯目の飲み物を注文しはじめたところで
「さてさてここら辺で、、」と言いながら
幹事を務める先輩が
一冊のスケッチブックを取り出しました。


「今日は、
Tさんをもっと知りたい!ということで
二択クイズをご用意しました!」
表紙をめくったスケッチブックには
大きめの文字で
質問が書いてあります。
「皆さん、ご自分はこっちだ、と思うほうに
手をあげてくださいね。」

『休みの日はインドア派?アウトドア派?』
『ご褒美に食べるなら焼肉?お寿司?』
『たけのこの里ときのこの山どっちが好き?』
簡単な質問が八問ほどありました。

質問ごとにせーの、で手をあげて
意見を交わし、
あれやこれやと華やいだお喋りが続きます。

「Tさんはお寿司派なんですね!
なにかお好きなネタはありますか?」
「私はエンガワが好きです。
最初と最後は絶対エンガワと決めているんです。」
ひとつの質問から
新たな話題に花が咲き、
会は大いに盛り上がりました。

人数の多い食事会では、
話題に困る場面があったり、
近い席の方としか話すことができなかったりと
むずしい部分があります。

先輩の、遊び心あるアイデアは
彼女を自然と話のうちに引き込み、
また、皆に一体感を生む、
心づくしの演出だと思いました。



春の空に星が散らばるころ、
会は、お開きとなりました。

「こんなふうに準備をしてくれてありがとう」
「とっても楽しかったです」
「また、月曜日から頑張りましょうね」

去り際の、それぞれの声が
この夜の充実感を物語っていました。

新たな出会いの多い四月には、
みんなの心が
輪になるような演出を。

素敵な先輩からの学びです。

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