おばちゃん鶏へ #あなたへの手紙コンテスト
高校三年生の梅雨。
農業高校で食の勉強をしていた私は
授業で「鶏の屠殺解体実習」をしました。
畜産学科の鶏小屋から、産卵率が悪くなったおばあちゃん鶏を貰い受けました。
その時、A4用紙二枚分くらいのケージの中のにいる貴方に出逢いました。
さて、二人一組で屠殺、解体していくのですが
ペアの子が嫌がるので私が鶏の頸動脈を切る担当になりました。
貴方を地面に押さえつけ、首周辺の毛をむしりとり喉元の頸動脈をさらします。
包丁でズバッと、一発でいきたかったところですが命を奪う覚悟がない私は躊躇してしてしまいました。
きっと、貴方を必要以上に痛めつけていた。
ごめんなさい。
その後は、「放血台」水道の蛇口下に設置された「放血台」にあなたを放り込む。頭を下にし水を流しいれ、血が流れるのを待ちました。
血は流れていくし、
息もできなかったことでしょう。
同級生の中には泣き出す子もいて、重い空気が漂いました。そして、貴方は最後の力?を振り絞ってバタバタバタと暴れ、息を絶ちましたね。
暴れる音が静まり、シーンとなる。
あ、ほんとに死んだんだ。
不謹慎なのかもしれませんが、この後の毛をむしり取る作業や作業は楽しくできたし、同級生も楽しそうに見えた。
さっきまで重かったクラスの空気も軽くなった。
この違いは何だろうか。
貴方が死んだ瞬間の話だからわからないと思うけど実は、静まり返った瞬間がターニングポイントでした。
あの瞬間、貴方が鶏肉になった。
「生きものが食べもの」になった。
解体された貴方の肉はゴムのように固かったよ。
正直美味しくなかったけど、
自分が手を下した命だからできるだけ食べた。
狭いゲージで日々を過ごし、
毎日休まず卵を産んでいたんだもん。
解体時には内蔵の病気も見つけたし
体を酷使していたことでしょう。
本当にお疲れ様でした。
そして貴方を食べた時が、
生きてる中で一番心を込めて「いただきます」
が言えた気がする。
貴方をきっかけに、生き物が食べ物であるという「当たり前」を強く実感したよ。
スーパーに「当たり前」のように並んでいる食材だって、生き物だってね。
そして、貴方を手に殺めるまで認識できなかったほど、その感覚が鈍っていることにも気づいた。
できるだけ食べ物を大切にしよう
と思うようになったんだ。
そこから食だけではなく農業についても学びたいなってなって農学部へ進学した!
食農教育の勉強をするようになって
本を読んだりボランティア活動もしてるよ!
農業や食、いのちの話をするたびに、
私は貴方を思い出していたよ。
まあ、なんだかんだ言って鶏肉も卵も
安くて美味しくて大好きだから、
貴方の親戚にはいつもお世話になってます。
貴方達の命のおかげで私達は生きていけています。本当にありがとう。
もし天国が存在するならば、
貴方には思いっきり羽を伸ばしほしい。
そして、芝生の上を歩き回って、
コケコッコーと元気に鳴いていてほしいな。
それでは、
天国でまた貴方に逢えるのを楽しみに待ってさようなら。
***
水野うた様の企画に便乗しました。
思いを伝えたい相手なら、人間でなくても可
ということで、おばちゃん鶏に向けて書いてみました🐔
これを機に身近な人や友人に向けて手紙でも書いてみようかしら。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました✨
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