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〖超短編小説〗 習慣

「ただいま」

誰もいない部屋なのに、帰ってきた時には挨拶をしてしまう。

すっかり自炊もしなくなったキッチンは、最後に掃除をしてくれた時のまま。
スーパーで買った割引弁当を電子レンジに放り込み、着替えを先に済ませる。

「そろそろ洗濯機回さないとな…」
洗うのは俺の担当じゃなかったんだけどなぁ。

テレビをつけているのに、やけに静かな部屋。
いつもの缶チューハイを冷蔵庫から取り出して、弁当と一緒に流し込むように飲む。 
最近の飯は何を食っても美味しくは無い。

手短に済ませた飯の後、いつも通りタバコを手に取る。
部屋で吸ったって誰も文句を言わないのに、律儀にベランダに出る。

秋風に吹かれて、手こずりながらも火をつける。
吐き出す煙の奥に、むせる君の顔が見えた気がした。

「そんな簡単に戻るわけないよなぁ」

誰に話す訳でも無く、独り言をこぼす。

朝も夜も、最近の思い出全てに君がいた。
2年も一緒に暮らしたんだから、たった数日で付き合う前の習慣になんて戻るわけが無い。

うっかり2つ買ってきたプリンは、早めに食べてしまおう。

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