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「変わる組織」はどこが違うのか? 19

プロセスデザイン1

 前回、ワークショップの落とし穴に嵌るかどうかは、ファシリテーターの技量しだいという話をしました。ということで、今回はファシリテーションについて少し書きます。
 私は、ファシリテーションには3つの要素があると考えています(下図参照)。ワークショップ全体のプロセスをデザインすることと、それを実行すること。その実行は2つの要素に分かれているので計3つになります。
 実行の中の2つの要素とは、話しやすく本音で話し合える安心安全の場を維持すること、ファクトベースでロジカルに話しあえるようにすることです。前者を感情、後者を理性と理解するとわかりやすいと思います。

ファシリテーションの3つの要素

 日本でもファシリテーションの勉強会はたくさんありますが、そのほとんどが、この感情的側面にフォーカスを当てています。「場づくり」などといわれます。これほど場づくりに人気があるのは、日本には「安心安全な場」は飲み屋以外にないのでしょうか。困ったことです。
 このような勉強会では、成果を出すために必要な理性的な議論を促す方法も扱っていますが、ツールの紹介に終始している感じがします。これ、数学や物理の勉強を、公式の紹介で留めているのと同じで、よほど応用力がないと実際の問題解決には役に立ちません。私、工学専攻なので骨身に染みます。公式を使いこなすためには、実践的な演習がもっと必要です。
 そして、一番問題なのはプロセスデザインです。まず、これについて教えているころがあまりない。経験がものをいうところですから、教えられる人が少ない上に、教えにくいですからね。

 もちろん、この短いブログの記事でも教えることはできませんが、いくつかのコツを書くことはできます。
 前回、プロセスデザインは、問題の定義から始まる、と書きました。問題を定義したら次にやることは、ワークショップの限られた時間内で生み出す成果物(deliverables)を具体化することです。一回のワークショップで、定義した問題が解決することは滅多にありません。問題が大きすぎるからです。そこで問題を小分けにして、ワークショップごとの成果を具体的にするのです。具体的というのは、「○○のアイデアリストができている」「優先順位付きの選択枝ができている」「△□ステートメントができている」といった「物の形」で表現できるようにすることです。

 成果物が決まったら、それを生み出すためのプロセスをスケッチします。そのスケッチをもって主催者と参加者両方に説明をして合意を得ましょう。「今度の3時間のワークショップで、こういう成果物を得るためにこういうプロセスを考えてみました。成果物とプロセスに合意いただけますか?」と話をするわけです。
 期待されている成果物の大きさと時間が釣り合わないこともあります。もし、成果物やプロセスに合意してもらえなければ、再考して再提案とあいなります。こうして合意されると、それがワークショップの成否を判断する基準になるわけです。「成功の定義」ですね。これが明確になると集中力が高まります。プロたるもの、仕事を始める前にクライアントと「成功の定義」を合意しておくのは身を守るすべでもあります。

 さて、一般的なプロセスは下図のようになります。成果物がしっかりできたとして、次の山場がどこになるかわかりますか? 発散と収束過程のデザインです。少し長くなり過ぎたので、これについては次回書くことにしましょう。

問題の定義ができたらワークショップの成果物を考える、プロセスをスケッチする


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