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「変わる組織」はどこが違うのか? 22

変わってきたリーダーシップスタイル

 人間には、4つの基本的な動機があるといわれています。ものごとを達成したいという達成動機(Achievement)、人と仲良くしていたいという親和動機(Affiliation)、人に影響を与えたいというパワー動機(Power)、そして逃げたいという逃避動機(Escape)です。
 すべての人にこの4つの動機があるといわれています。基本的動機ですからね。ただ、そのバランスには違いがあって、達成動機が優位の人、親和動機が優勢な人、などいろいろだそうです
 よく誤解されるのですが、達成動機は人が認めてくれるかどうかは関係ありません。とにかく何かを達成することが動機。オタクですね。これと微妙に違うのは、認められるために達成しようとする動機、これはパワー動機と分類されるそうです。ハーバード大学の心理学部の研究では、ノーベル賞を取るような科学者、著名な芸術家の多くが、パワー動機優位の人が多いようです。これ、驚きです。
  さて、これまでの研究で、リーダーといわれるような人たちはパワー動機優位の人たちだということが、はっきりしています。当然ですよね。オタク系の人には向きません。親和動機や逃避動機が優位の人もリーダーには向かないでしょう。
ところが最近。その傾向に変化がみられようです。昔は、見るからにパワー動機の人 ― そうトランプのような人 ― が成果を挙げるリーダーだったのですが、最近は、一見そう見えないリーダーが成果を挙げるようになってきたようです。一見オタク、一見、親和動機が強い人たちがチームを率いて成果を挙げるという事例が増えているのです。
 でもね。ちゃんとテストすると、こういう一見そう見えない人たちも実はパワー動機優位、あるいはバイモーダル(両方優位)な動機の持ち主のようなのです。「隠れパワー動機」が増えている!?  しかし、どうしてそういう変化が起こっているのか? 不思議ですよね。
 私は、インターネットや人・物の輸送コストの低下、グローバリゼーションと関係があると考えています。本当に優秀な人 ― ジョブズ、ゲイツ、ベゾス、ペイジやブリン、マスクのような人は世界中探してもほんの一握りしかいません。そこまでじゃないけど優秀な人たちは、典型的なパワー動機の(ボス的な)振る舞いにはついていきません。だって、そんなとこで働かなくたってをいくらでも選択肢はありますからね。つまり今日のリーダーは、自分よりはるかに優秀で、多様な価値観を持っている人を受け入れる力がないといい仕事ができない。そういう環境が、グローバリゼーションとテクノロジーのおかげで生まれたからだと思うのです。

効果を挙げるリーダーシップスタイルがインタラクティブ型にシフトしている

 そういう意味では、日本は遅れています。が、少しずつ変わり始めています。10年前より、リーダーたちがやさしくなった、と思いませんか? WBCの栗山英樹監督、青山学院の駅伝チームの原晋監督。ひと昔前の人たちと違いますよね。でもしっかり結果を出しています。むかしのように偉そうにしていると、面従腹背どころか誰もついてきてくれません。そもそも会社辞めちゃいますしね。パワハラで訴えられるかもしれません。

 変われる会社の第一条件は、リーダーが変わろうという強い意志を持っていることですが、そのリーダーシップのスタイルは変わりつつあるということは意識しておいて損はありません。トップダウン型からインタラクティブ(ボトムアップ×トップダウン)型へと移行しているのです。そのリーダーシップスタイルを支えるスキルがファシリテーション。
 このファシリテーション、日本の大企業で最初に取り入れた経営者、誰だか知ってますか? カルロス・ゴーンです。あのこわもての人。四半世紀前にすでにファシリテーションの重要性を知っていて、それでゴーン改革が実現したのですね。外から入ってきて間もなく、あんな大組織の事情を把握して歴史に残るような大改革ができるわけがありません。優秀な社員たちの知恵を引き出し、彼がその背中を押したのです。
 もしファシリテーターが司会者みたいなものだと思っていたら、この機会に考え直してみてはどうでしょう。あなたを魅力的なリーダーにするスキルかもしれません。


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