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「変わる組織」はどこが違うのか? 23

ハイ・コンテクストな日本社会

 日本はハイ・コンテクストな社会、と喝破したのはアメリカの文化人類学者のエドワード・T・ホールでした。それに対してアメリカは、典型的なロー・コンテクスト社会。彼の著書「文化を超えて」には、下図のような図が添えてあって、見事にその違いを表しています。

 このコンテクストの多寡の違いは、組織変革の現場にいると結構大きな要素になるので、ついその違いに目が行ってしまうのですが、最も大切なことは、人が納得するには情報だけでなくコンテクストが必要だということです。
 中期計画が動かないのも、指示命令だけの組織がぎくしゃくするのも、「情報」に頼っているからで、コンテクスト共有が疎かになっているところに原因があります。情報共有はデジタル化が容易でスケーラブルなので便利ですが、コンテクスト共有はデジタル化になじまず、スケーラブルではないので、組織が大きくなればなるほど大変です。

 ホールは、文化的な違いを指摘しましたが、この違いは同じ日本人の中にもあります。私はスタッフ部門を現場の両方を経験しましたが、概してスタッフ系の人はロー・コンテクスト、現場系の人はハイ・コンテクストになりがちです。もちろん、同じスタッフ系でもハイ・ロー両方のタイプの人がいますし、現場でも同じです。
 このタイプの違いはコミュニケーションの齟齬を生み出します。ハイ・コンテクストな人は、コンテクストを共有していない人の話を信用しない傾向があります。ロー・コンテクストの人は、言葉(つまり情報)によるコミュニケーションに頼りがちで、言語化の下手な人を見下しがちですからね。
 私は、組織の変革を進めていくにはワークショップを多用することが不可欠だと思っているのですが、その理由は、この納得に必要なコンテクスト共有と情報共有を同時に満足する効果的な、多分唯一の方法だからです。

 今の朝ドラ「虎と翼」に出てくる山田よねは、法律(情報)でなんでも解決しようとする典型的なロー・コンテクストタイプとして描かれていますね。それに対して主人公の猪爪寅子はハイ・ローを使い分けられるタイプ。そういう視点から見ると、なかなか面白いドラマです。


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