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その場しのぎでも、もしそれが希望なら

イベントで話す内容を考え中。
こうして人前に出たり、解離性障害のことであれこれやっている時いつも思い出すシーンがあり、その話をぽちぽち書いてみました。

入院中の、中と外

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「わかってもらえない」。この言葉は、日常的にいろんな患者さんから出ていました。
病院でなくとも他人に理解されないことで苦しんでいる人はたくさんいるけど、そういう人が集まってきたわけだから余計気になったんでしょう。

私が入院していたのは、急性期の方は少ない静かな病状の患者が多い病棟でした。そこには絶対的な安心感と、どこへもいけないという空虚感が同じくらい流れており、自分と向き合うことへの葛藤なども入り混じったとても独特な空気が流れていました。

入院の背景は人によって様々ですが個人的には、外(=社会?)へ出て行きたいけど出て行けない、出て行って痛い目にあったからここにいる。でもまた出て行かないといけない、という矛盾(?矛盾ではないのかな。当然なのかしら)が、独特の空気をより濃いものにしていた印象がありました。

病棟では、屋外と病院、社会と個人、現実と心象、といろんな意味合いでの“出入り”がたくさんあります。
その経過の中で命を落とす人がいたり、落とさなかったから来た人もいるし、死と葛藤するために来た人もいます。
病気や怪我ではなく、主体的に選択される「死」が近いところにあるその空気は、自分がこれまで感じてきたのとは全く別のものでした。
ですから、その死にたい気持ちをフォローしてくれる医師や看護師(や、人によっては患者仲間も)がいない外へ出ていくことは、大袈裟に言えば「死ぬかどうかの境目」でもありました。

味方は全くの0人か

退院後どういった環境になるかはそれぞれですが、私は、死に向かってしまう大きな理由の一つに「わかってもらえるかどうか」という不安と孤独があるような感じがしていました。
とはいえ、一応私も患者だったので同じような不安を抱えており「わかってもらえるよ、大丈夫だよ」と言える心境ではありませんでした。
けれども、少数であってもわかってくれる人がいるのを知っていたし、そしてそういう人の存在を信じたかったし、第一、病院で知り合った人はわかってくれる存在なのだから、本当にゼロ人という意味で「“誰にも”わかってもらえない」という事はないんじゃないかと思ったのです。
思ったというか、そうであって欲しかった。

だから、わかってもらえるのかどうか、どうしたらそういう関係を作れるのか、また、何をしたらダメだったのかということも引っくるめてリアルに報告する人がいたら、それを聞いた人は少なくとも「全く理解されない」という気持ちから「多少は理解されることもある」という思いに一歩進めるんじゃないかと考えました。

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社会が変わるのはたいへんだわ

前置きがめちゃくちゃに長くなりましたが(前置きだったのか?!)その試みのひとつが今回のイベントです。
ごく個人的な理解の齟齬ではなく、メディアや出版など、明らかに影響の大きい分野から発せられる偏った表現はなぜ発生するのか、あるいは発生しても仕方がないことなのか、だとしたら、それをどう捉えていくのか。ただ批判し合うだけではない話ができたら建設的かなあ、なんて思ったのでした。

長期的な目線で見れば社会は良い方向に変わっていくかもしれません。
でも、そう悠長なことを行っている間にも人は死ぬのです。死ぬほど苦しいとき「でもきっと未来は変わっていく」とか思うのはかなり体力がいります。
ですから、とりあえず、いま現在の苦しみをしのげるものが必要だし、それを妨げるものがあるなら、それについても考える必要があると思います。
…でもあんまりね「俺は社会を変えるぜ」とかね、言いすぎてもほら、また、疲れちゃうから。疲れたらつらいから。
「どうしよっかなあ」「どうする〜?」くらいのテンションで、それができたら一番いいと思っています。

というわけで、社会に大きな一石を投じなくても、参加した人が少しでも「死ぬほど悪くはないかもしれない」「希望も多少あるっぽい」くらいの気持ちになれたら嬉しいです。

開催情報

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7月3日(金)20時〜21時
「本の街で、こころの目線を合わせる 2nd」
第一回Tokin ×山田ルイ53世(髭男爵)オンライントークセッション

(主宰・合同出版、神保町ブックセンター 協力・共用品推進機構)

配信方法:zoom予約制・参加費500円・先着100名様
・参加者のカメラはオフになります。(コメントではご参加頂けますが、音声・動画ではありません)
・本配信の撮影やSNS等第三者へのURL転送、転記は固くお断りします。

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