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#19 「施術してもまた戻る」理由 ~自転車が漕げるようになるまで~

施術後必ずと言ってもいいほど聞かれることの1つ、

「でもまたすぐ戻っちゃうんですよね…?」

お気持ち、とてもとても分かります。

どんなにいい施術を受けても、その時に勇気を出して自費施術で少し高めのお金を出しても、またしばらくすると元に戻ってしまう。
そんな経験をした人は沢山いらっしゃるのではと思います。

このことについて施術者側はいろいろな考えや理論をお持ちだと思いますが、私自身はこのように考えて理解しています、という事を今回お伝え出来たらなと思います。

根本を正さなければすぐに戻る

たとえばマッサージ屋さんなどに行くと、その時は気持ちよくていいんだけど、翌日にはまた元に戻る、または揉み返しなどで逆に身体が痛くなっているという経験がある方は多いと思います。

筋肉が緊張することにも理由があります。
ならばその理由の部分を解決しない事にはすぐに症状が戻ってしまうのは当然です。

施術直後、または翌日に戻るという場合は根本となっている原因を正せていないから、ということは大いにあります。

施術を受けること、それは経験の1つ

しかし、身体を整えて、いい状態に戻したとしてもまた同じ環境にいれば元に戻ってしまうこともまた当然と言えます。

野球選手がピッチングの繰り返しでケガをして、治療してまた現場に復帰したとしても、また同じ間違ったピッチングを繰り返していれば再受傷してしまいます。

さらに私たちは年を重ねる度に日常生活の中で膨大な「経験」を重ねていきます。
その経験で出来た「習慣」または「癖」というのは強力です。
一時的な変化程度であれば、それらの「習慣」や「癖」がたちまち飲み込んでしまいます。

それではどうせまた戻ってしまう施術は無駄なのでしょうか。

いえ、そうではありません。

施術によって起こる有益なからだの変化は、1つの経験として着実にあなたの身体に残ります。

本質を捉えた施術であれば、筋肉は適切に緩み、本来の筋出力を取り戻し、重心の位置や、足の着き方も正常に戻ります。

その状態で行われる行動の1つ1つはいわば「リハビリ」です。
無意識の中で正常の動きを取り戻す作業です。

よく施術後再来院された患者さまに、
「歩き方がいつもと違ってうまく歩けなかった」であったり、
「いつもと違う場所がなんか疲れた」というようなフィードバックを頂くことがあります。

それは何故かと言えば、今までの異常の状態にからだが慣れてしまっていたからです。

足の長さは症状が強い方は3cmくらい差がある方もざらにいらっしゃいます。
そうなれば正常の状態に戻せば、そこから3cm違う状態になるわけですから、違和感を覚えるのも仕方ありません。
また、今まで力が入らなかったせいで使えずにいた筋肉が急遽働かされることになるので、当然いつもと違う筋肉が疲れたりもします。

その状態を「経験」することはからだにとっても大きなことです。
それはまるで自転車に初めて乗るようなチャレンジかもしれません。

ですが、今まで自転車に乗れなかった人が1回乗っただけですぐに乗れるようになるでしょうか。

そう、まさに施術とは自転車に乗るまでの経験のようである、と私は考えています。

自転車が早く乗れるようになる人

自転車が早く乗れるようになる人はどのような人でしょうか。

・感覚を掴むのが上手な人
・ある程度基礎体力がある人
・自転車は安全であると信じることができている人
・できる限り沢山乗っている人
・自転車に正しく乗れている人

などが挙げられると思います。

・感覚を掴むのが上手な人

 私の患者さまで、からだに興味をお持ちで、かつその自分の身体は、今どういう状態で、どのような変化が起きている、というのをしっかり感じ取り、かつ言語化することが上手な方がいらっしゃいます。
そういう方は明らかに他の方より良い効果が出ますし、より長い時間効果が持続します。
その一回の経験で多くを学習し、からだに反復させながら生活ができているからです。
 どうしても経験が少なければからだが忘れてしまうものも出てきますが、繰り返し経験することで理解が深まり、その内当たり前のように自転車を漕ぐことができます。

・ある程度基礎体力がある人

 これは仕方がありません。筋肉や関節が自転車を動かしている以上、最低限の体力は必要です。
 ですが、自転車に乗ることを繰り返していけば、その為に必要な筋力というのは後から自然と付いてくるものです。
 高齢者の方と20代で、どちらも初めて自転車に乗るんだという場合、それはどうしたって20代の方が有利です。
余計な癖や制限もない為、やはり若い人の方が施術の結果が出やすいことが多いですし、もっと言ってしまえば、早い内から施術を経験している方が有利です。

・自転車は安全であると信じることができている人

 自転車に恐怖心を抱いた状態でスムーズに運転はできるでしょうか。
たしかに自転車を運転する上で注意すべきことは沢山ありますが、まずその自転車を信じられなければ、なかなかうまくペダルを踏み込むことはできません。
 あなたの身体、そして受ける施術に身を委ねられるかどうか。これは目的達成にはとても重要な要素です。

・できる限り沢山乗っている人

 一番納得できるし、わかりやすいと思います。
1回では習得できなくとも、諦めずに間を空けず軌道修正をすることで、早く上達することができます。
1回よりも2回。1か月ぶりより2日続けて。
当然目標達成までの早さに違いが出ます。

・自転車に正しく乗れている人

 意外と多いのがこのパターンです。
メンテナンスをした自転車で毎日乗ってはいるけれど、最初から立ち漕ぎをしたり、手放し運転をしている人は結構いらっしゃいます。
具体的にいうと、起き上がる時にまっすぐ腰だけ、腹筋だけを使って起き上がろうとしたり、急に強負荷のトレーニングを再開してしまったりです。
 焦りは禁物で、まずは着実に経験を積むこと。
少しコツを掴んだからと言って、無茶をすれば下手をすれば大ケガにもつながります。くれぐれも1歩ずつ。しっかりと経験を積むことが大切です。

正しい身体の状態を本当に獲得すれば、あなたは自転車に乗るように当たり前のものとして健康的な生活を送ることができます。

私達施術家は、ときに補助輪になり、ときにうしろでサポートするお父さんやお母さんになり、またはあなたのその一踏み自体になって、あらゆる面から必要な経験をあなたに送ります。

その経験は有意義で大きなものですが、それを活かすも無駄にするもあなた次第であることもまた事実です。

本気で望めば、きっとあなたにも自転車に当たり前に乗れる日が来ます。

自転車に1度うまく乗れてしまえば、なかなかからだは忘れません。
そうすればあなたは今よりももっと遠くに、楽に、気持ちよーく進むことができるはずです。

ですので諦めず、一緒に健康への道を歩んでいきましょう。

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