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もうひとつのラブストーリー(27)「修羅場」

友達のSがアパートにやって来て、「ちえ」のことを「Eさん」と勘違いしました。

Sが帰ると、「ちえ」が「Eさんて誰なの?」と聞いてきました。

「やっぱり⋯」

「あれは中学の同級生の話だよ」

「「トクちゃん」その子と付き合ってたの?」

「違うって、Sが変なこと言うから誤解するよな⋯」

「じゃあ「Eさん」のこと好きだったの?」

「それも違うって」

「好きだとか嫌いだとかの関係じゃないから⋯」

「ふ~ん。私と付き合う前でしょうね?」

「あったり前じゃん。俺は二股できるほど器用じゃないから」

「この前、ヤキモチはやき過ぎないって約束したから良いけど⋯」

「だからさあ⋯。元カノとかじゃないからね」

「元カノなら元カノでも良いんだけどね」

と言った瞬間、枕が顔に向かって飛んで来ました。

「なんだよ⋯。なにすんだよ!」

「もう「トクちゃん」嫌い!」

「おい、ヤキモチはやき過ぎないじゃなかったのかよ」

「「トクちゃん」嘘ついてるでしょ⋯」

「「トクちゃん」って嘘つくと鼻がピクピクするんだよね⋯」

「えっ⋯。そ、そうか?」

「私と付き合う前に誰かと付き合ってても我慢できるけど、嘘ついたら許さないから」

「ゴメン⋯」

「ホントのこと言って、怒らないから」

「ホントに怒らないか?」

「⋯」

「あのさあ⋯。少しだけ付き合ったって言うか⋯」

「付き合ったって言うかってどういう意味なの?」

「ゴメン⋯。少しだけ付き合った⋯」

「「トクちゃん」のバカ、バカ、バカ」と言ってまた、枕を投げて来ました。

枕の次は、枕元の目覚まし時計が飛んで来て、私の目の付近に当たりました。

「痛え~。おい、マジで痛いんだけど」

「⋯」

「ホントは「Eさん」のこと好きだったんでしょ?」

「⋯」

「元カノなんでしょ?」

「元カノって言うほど付き合ってないけど⋯」

「じゃあなんでSさんが、私のこと「Eさん」じゃないの?って言ったの?」

「あの人も彼女いないだよね。だからさあ、よく女の子の話をしてたんだよ⋯」

「その時に、ちょっと「Eさん」のこと話したんだよ」

「気になる子がいるってね⋯」

「やっぱり「Eさん」のことが好きだったんでしょ?」

「う~ん。ホントは、ちょっと好きだった⋯。ちょっとだけだけど⋯」

「⋯」

「じゃあなんで最初から、そう言わないの?」

「また、「ちえ」がヤキモチやくと思ったから⋯」

「元カノとか好きだっ子がいても仕方ないけど⋯」

「嘘だけは嫌だからね⋯」

「ゴメン、ホントにゴメン」

「バカ、バカ、バカ!」

「「Eさん」もアパートに泊めたりしたの?」

「それは、ないって。第一あの頃はアパート借りてなかったから⋯」

「実家で泣いたって子が「Eさん」なの?」

「それは⋯。違うんだよね⋯」

「あの子は、ホントに好きだとか嫌いだとかの関係じゃないから」

「じゃあ別に好きな子がいたってことなのね⋯」

「あのさあ⋯。正直に言うよ」

「成人式の時に、久しぶりに会ったんだよ。それで友達の家で、みんなで飲んでる時にデートに誘ったんだよ」

「それで?」

「3ヶ月くらい付き合って言うか⋯」

「付き合ったんでしょ?」

「うん⋯」

「「Eさん」ともHしたんだ⋯」

「おい、そう言うことは聞かない約束だろう?」

「俺だって「ちえ」の元彼のこと聞かないじゃん」

「だけど⋯。やっぱり気になるの!」

「俺だって「ちえ」の元彼が気になるの!」

「確かに「Eさん」のこと好きだった時期もあるけど、今の「ちえ」に比べると「好き」のレベルが違うんだよね」

「それってどう言う意味?」

「なんて言ったら良いのか⋯」

「絶対離したくないって感じじゃなかったんだよね⋯」

「今の「ちえ」は絶対離したくないし、誰にも渡したくないんだけど⋯。

「ホントに私のこと離したくないの?」

「それは、ホント!ホントにホント!」

「私のこと好き?」

「好きだよ~。好きに決まってるじゃん」

「それ本気だよね?」

「本気だよ。今、俺、鼻ピクピクさせてるか?」

「⋯」

「分かった⋯。許してあげる⋯」

「ありがとう。ゴメンな嘘ついて⋯」

「許すけど、今日のHは、なしだからね」

「え~っ」

「だって、そんな気になれないもん⋯」

「そうか⋯。仕方ないよな⋯」

「でも、帰るなんて言わないよな?」

「うん。今日は泊まってく⋯」

「それだけで良いよ。「ちえ」が機嫌直してくれるなら」

「これからも嘘ついたら許さないからね」

「分かった、分かったって、嘘は絶対につきません、だから結婚しような」

「うん⋯」

「ちゃんと返事して」

「うん、結婚する」

「良かった⋯。じゃあHはしないけど一緒に寝よ」

「うん、良いよ」

「良かったよ⋯。「ちえ」のこと抱きしめても良い?」

「うん!」

「キスしても良い?」

「良いよ」

チュッ

「おい、「ちえ」目覚まし時計が壊れちやったんだけど⋯」

「えっ、ホント?」

「ダメだ、完全に壊れてるわ⋯。新しいの買わなきゃ⋯」

「ゴメンね。明日一緒に買いに行こう」

「うん。そうしょう」

「あ~。「トクちゃん」まぶたから血が出てるよ」

「えっ、さっき目覚まし時計が当たったとこだ⋯。マジで痛いんですけど」

「ゴメンね、ホントにゴメンね、カットバン貼っとくね」

こんな感じでなんとか修羅場は収まりました。

                                                                       つづく



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