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エコ事業の失敗:燕三条の町工場の一例

エコロジーやSDGSに関連した事業は、耳障りも良く惹かれますよね。
トクニ工業でもリサイクル機器の製造販売に携わった時期がありました。
現在は行っておりません。
10年ほど前になるのですが、ある取引顧客さんがリサイクル業者向けのガラス瓶破砕機を作っていました。その金属部品の加工をお手伝いさせてもらっていました。
ある時、そこのお客さんの担当責任者の方が、60歳で定年になるということで、雇用延長されず退職することになったということで相談がありました。
本人は気力・体力ともにまだ仕事を続けていきたいということで、個人事業主として再出発を考えているとのことでした。しかし、新たに事業を起こすには、運転資金が必要になります。部品の購入は、現金引換えや前払いを要求され、値引き率も低くなりがちです。商品の販売は、月締め翌月払い、4か月後の手形の場合もあり。など、資金面での条件が不利になりがちです。
長年の取引実績もありましたし、信頼関係も構築されていましたので、今の顧客企業が、ガラス瓶破砕機の事業を行わないのであれば、うちの会社に籍を置いて事業を行ってはどうかと打診しました。
そのような経緯で担当者の受け入れとともに、ガラス瓶破砕機の事業に取り組み始めました。主な顧客は、リサイクル機器を販売している商社やリサイクル事業者でした。新規の取引先もありましたが、買い替え顧客や消耗部品のみを購入したいという要望もありました。
資源ごみのリサイクルには、主に缶、瓶、ペットボトル、紙、段ボールなどがあります。アルミ缶、スチール缶など原料としてリサイクルされやすいものは、資源価値があるため積極的にリサイクルされています。一方ビン類は、ビール瓶や牛乳瓶などのリターナブル瓶とワイン瓶、調味料瓶などのワンウェイ瓶に大別されます。リターナブル瓶はメーカーにより回収され、洗浄されたのち再び中身を詰めて販売されます。ワンウェイ瓶は市区町村やリサイクル業者により回収され、色別に分別されたのち、細かく砕かれカレット上にされます。原料としての再利用度は、ガラスの原料が安価なためあまり進んでいないようです。また、ワイン瓶などに海外製のものがあるため、その一部が粗悪な原料から作られている場合があり、品質が安定しにくいという側面もあるようです。細かく砕かれたカレットは主に廃棄物として埋め立てられていることが多いようです。ガラス瓶の形状を残したまま埋め立て地などに投棄されると風雨で劣化したことで地中の中で破損し地盤沈下の原因になったり、汚水がたまって害虫の発生源になったり、異臭の原因になる場合があるそうです。
資源価値が低いガラス瓶のリサイクルですが、人気が無いため競合も少ないということもあります。但し、競合が少ないということはそれだけ市場のパイが小さいということで、事業の黒字化は難しいということです。損益分岐点を超えないと黒字化できません。人件費、諸経費など毎月発生する経費があります。それに加え機械を受注したら、資材・部品を購入し製造に入ります。完成するまでに数か月かかり、納品し、試運転し、顧客から受領してもらい、代金を受け取らなければなりません。前金で全額払ってくれるお客さんは良いのですが、そのような良顧客ばかりではありません。
5年間ほど取り組んだのですが、担当者の人件費を賄える利益が出せたか微妙なところです。
結果、売り上げが安定せず、収益化の見通しが芳しくなかったため、担当者の退職を契機として、ガラス瓶破砕機の事業から撤退しました。
利益が出せないのは一番の理由としても、何故、せっかく取り込んだ新規事業から撤退したのでしょう?
・収益化の見通しが甘かった。
・社内に受け入れた担当者と会社の企業文化が異なりすぎていた。
・エコ事業という響きの良い案件に対し、脇が甘くなっていた。
・それまで所属していた会社から雇用延長の打診を受けないほど、癖の強い人材だった。
・会社の目指すべき方向があいまいだった。
結論から言えば、協力企業として、ガラス瓶破砕機の事業の担当者の起業をサポートすれば良かった、ということになります。
製造業として20人くらいの規模でやってきた会社にとって、販売や新規の企画開発をになう人材を入れるのはリスクがあります。ただそういった人材を入れていかなければ、事業規模は拡大していかないのですが。
起業に対して出資するなど、資金面でサポートすることもできたはずです。
こうやって文書化すると、コア事業とその周辺事業を区別し、強みを活かす経営を心掛けていくべきなのだと改めて、感じました。

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