【9月の本よみ】 池のほとりで
なんとなく、混雑する駅に足が向かない時や、電車に乗る気分じゃない時ってある。
この日、用が済んで、あとは電車に乗って帰るだけだったのだけど、天気のいい日で、そのまま人の多い駅の構内に入っていく気にならなかったので、大きな池のある公園を歩くことにした。
よく晴れていて、そこにいる人も、緑も、とても気持ち良さそうに見えた。
すこし歩くと、私も “公園にいる人” の一員になって、とけ込んでいった。
歩きながら池の方に目をやると、柵のすぐ手前に設置されているベンチで本を読んでいる男性が見えた。
いくつぐらいの人だろう。
男性というか「おいちゃん」という感じの、優しそうな人だった。
ベンチの脇には自転車が止められていたから、きっと割と近くの人なのだろう。
そっと近づいて、しゃがんで声をかけると、すぐにいいよと快諾してくださった。
顔が入らないように頭は入れないで撮影し、確認の為にご本人に撮った写真を見せると「普通に撮っていいよ、これじゃ分からないでしょ」と言ってくれた。
そうして2枚目として撮った写真が今回の写真だ。
別れ際、
「読書中にお邪魔しました、ありがとうございました!」
「ご苦労さま〜」
最初から最後まで、驚きも警戒もされず、まるで知り合いのおじちゃんに頼んだような、そんな和やかな撮影だった。
text:Tamura Mayo
「東京の本よみ」とは?
本をよむ人のポートレート。
ストリートスナップさながらに本を読んでいる人に声をかけ、読書姿と読んでいる本の表紙を撮影させてもらっています。
毎月20日にサイトに新しい写真をアップし、末日に撮影後記をnoteにアップしています。
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