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街は人そのもの

遅い盆休みを終えて、別府から東京に戻っている。今飛行機は四国の真上辺りだ。

4年ぶりの故郷の山や海や星空は、少年時代の記憶と違わず美しく輝いていた。扇山や別府湾、温泉の煙が立ち登る街並はあの頃のままだ。歳を重ね、見た目は年老いた両親もまだまだ元気で、今年98歳になる祖母も僕との会話を楽しみにしていてくれた。

妻も含め家族で食卓を囲み、母の手作りのご馳走をたらふく食べた。久しぶりに会った妹とはカラオケでデュエットし、甥っ子達の運動会にも参加した。近所の野良猫も相変わらずの可愛さだ。

変わらないなと思う一方で、変わりゆくものもある。新築のマンションをいくつも見掛けたり、馴染みの店が跡形もなくなっていたり。1番驚いたのは近所の道路が4車線になっていたことだ。様々なアートプロジェクトや新たな観光施設、お洒落なカフェでデザインされた別府は、クリエイティブな街に生まれ変わろうとしている。きっと、別府という街はこれからも変化してゆくのだろう。それは全ての街に当てはまることかもしれないが、別府は様々な文化がブレンドされているからやはり特別だ。

だけど僕の中にある故郷の素晴らしさはいつまでも変わらない。昔そこにあったものがなくなってしまっても、僕は思い出を失ったりはしない。それは、ここに住む人々が街そのもので、別府に住む人達は変わらずこの街で生きているし、多少の入れ替わりはあるにせよ、皆この街を愛しているからだ。

この街でこれから僕は作品を作っていく。「縁」をテーマに「人」を撮る。今決めているのはこれだけ。温泉を舞台に人にスポットを当てる。メインディッシュは人で、温泉はデザートだ。この先どんな作品が生まれるのか、僕自身楽しみで仕方がない。

2017.10.3 東京神父

東京神父 写真家。1978年4月20日生まれ。 別府出身、自由が丘在住。