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山登りは物語りの扉を開く

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<プロローグ>

なぜ山に登るのか?

と問われ、ちょっとかっこいい答えをしたかったので「登るときだけ物語の主人公になれるからじゃないかな」なんて言ってしまったのものだから、今回の登山はそれを意識しながら登らざるを得なくなった。

<登山準備>

2020年9月上旬、台風によって断念しようか悩んだが、台風がのろのろしてくれたおかげて決心がついた初登山泊。初テント泊ということで悩みに悩んだソロテント「North Face マウンテンショット2」をゲットし、登山服をしっかり買って臨む。最近はすっかり「Hoglofs」ファンで3着も買ってしまった。

7時新宿発のあずさは空いていた。そもそも夏期休暇をソロ登山にしたのも、コロナ対策で距離を保つという意図もあったので、案の定だった。長らく旅もできていなかったので、途中景色のを覗かせる山間部の田園風景はとても緑鮮やかで感動的だ。

<トラブル>

そして長野県茅野駅に降り立つも、早速事件勃発。南八ヶ岳入り口の美濃戸口行きバスがない。夏しか平日は運行しないのだという。もっぱらコロナ影響で期間もぐっと減らされている。コロナめ〜!

ここまで準備した手前、諦めるわけにも行かなければ、今から別の駅に行くとなるととてつもないタイムロスだ!うわーっとうなされていると、追い打ちをかけるようにバックパックにカメムシ君がぴったり。

臭い臭い液をかけられたら、地獄の山登りになってしまう!ということで慎重に10分かけて追う払う。そして、ロープウェイもある北八ヶ岳に活路を見い出す。観光地化してて物足りないなと思いつつ、帆を向ける。

<登山開始>

ロープウェイで山頂駅へ。標高2237m。このエリアで一番高い山は北横岳の2480m。楽してだいぶ稼いじまったなこりゃと思いながら速攻で北横岳を駆け上がる。天気が悪く靄がかってはいたが何とも幻想的である。この後500m急降下し続けることも知らず、あえて危険コースで下山。これが大変だった。登るときと降下のときの体の負担は違うから、ストイックに下りもきついのだ。足がガクガクする。

しかも巨大な神々しい直径2mくらいのでかい岩がゴロゴロしていて、道というか岩をひょこひょこ飛び越えていかなかければならない。テントなど重荷を背負う私にとって、非常に辛いし、明日これと同じくらい登らねばならないなんて!一歩一歩疲労と憂鬱が蓄積されていく。。。

そんなんこんなんで2時間くらいかけて下りテント場がちらりと見えたときはとっても嬉しかった。山登りはこんな小さなことが感動になる。

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<双子池にて初めてのソロ登山テント泊>

双子池テント場はトイレや水場のある管理事務所から15分もかかる。つまり往復30分。まじか。しかも足場悪っ!そしてなによりテント泊私だけ!怖っ!

それでも今回ここに決めたのは池の畔という好立地であり、朝起きたときの清々しさを想像するとけっこうレア体験できるんじゃないかと思った。ところどころ草の茂みで音がわさわさ。スターウォーズ3でオビワンが乗りこなすイグアナ?の甲高い鳴き声みたいなのが「キューン」て鳴り響く。ちょっと怖いけど管理人に聞いたらと鹿の鳴き声と聞いて、かわいくてちょっと萌え。

そして実際のところ夜が最高だった。今宵は満月、満月と池に反射するおぼろ満月の美しさ。そして散々迷ったサフランカラーのソロテントの3媒体が織りなすハーモニー。これだけで来てよかったな。と一人感慨にふける夜なのであった。

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その日の夜はアルファ米とレトルトカレー。さらに事務所で売っていた地ビール「yaiyai」。お腹も減ってて最高に美味しかった。

しかし、いいことばかりではなくて、夜9時位は長袖着ればいいくらいだったが、真夜中目醒めてめちゃくちゃ体冷えてることに気づく。フリースとウルトラライトダウンを着てようやく暖をとれたが、温度の急激な変化は中々勘弁して欲しい。

<テント泊朝>

テントのジップを開ける。靄がかる池は最高に美しかった。朝の差し込む光は誰にでも訪れる美しき瞬間。疲れているからこそ美しい景色との出会いは一塩だ。早朝テントの結露がすごかったのもあり、乾くのを待って近くの双子山へ。荷物が軽いとなんて楽なのでしょう。猿みたいにひょこひょこと山を登る。

広がる雲海。

雲海っていい響き。靄ではなく雲の海、雲海。しばしば飛行機の乗っていると、飛び降りてみたくなる雲海。自分の足で雲海が見えるところまで行くのはいいね。この朝の山の感じは登山泊しているからこそ味わえる醍醐味だと思う。7時頃の話です。

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<登山二日目はつらい>

テント撤収。昨日あんだけ下ったから、今日500m登ると思うと気分が重い。が、満月や朝靄の感動を噛み締めて歩く。しばらく平地だがもはや荷物だけで苦痛。肩が痛い。まじこの苦行なんなんだ〜。正直山小屋泊だったら荷物半減位なんだけど。。。わざわざ重たいテント担いで苦しみを味わうなんて変態行為だ!

そして、冒頭述べた山に登るのはなぜか?という問いに「変態行為だ」と答えたくなる乏しい思考の無限ループ状態に陥る。思考力が低下する。しかし、不思議なことに歩いているとなれてくるんだなこれが。これもある意味変態である。

ここでやっと水場発見(テントサイトの水は煮沸しなければならず、結局別途ペットボトル3本x400円も使ってしまった)嬉しいね〜自然の水は。テンション上がる。ガブガブ飲んで頭にぶっかける。

そして、なだらかな平地から500mUPへの道をたどる。昨日より足が上がらねー。というか地図に書いてある予想時間に収まってない〜。不安になる。5分登ったら休みたくなっちゃう感じ。よく都会の道端でお年寄りが停止しているときあるけど、こういう極限状態にいるのかなど想像する。

そして、邪念。そのまま帰る方向へ行こうか悩みだす。そもそもロープウェイでちょっと楽した登山。無理することないではないか。夏休みだし休もうぜ。いや、でもここで諦めたら男がすたる。

などの小格闘をするものの、はじめから答えは決まっている。進め!

一度休んで昼食。パスタとコーンスープ。今回キャンプ用スプーンを買ったが、昨晩のカレーの黄ばみが取れない。だぶんもうとれない。少し凹む。しかしそんなことはどうでもいい。進むのだ。

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<ラスト・マウンテン>

そして、最後の縞枯山。素晴らしかった。山頂は視界が悪く、展望台というところまで15分かけて歩くと、そこには岩がごろごろいい景色を見てくれと言わんばかりに転がっている。登山するとよく思う。山頂にある巨大な岩場ってのは神様が置いてったんじゃないかと思うくらいにいとも簡単にそこにあるのだ。一方でこれが噴火の積み重ねで残ったものであればそれはそれでミラクル。よく落ちないで何万年もあったのね。

360度のパノラマはとても美しい。天気も良好で靄なく長野の町並みが見える。のどかだ。そして当初行こうと思っていた南八ヶ岳も見える。ちょっとうまくなった自撮りスマイルも様になっている。

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<最後に>

人の少ない山中で、自分のペースで通ったことのない登山道を進む。この登山道はいつからあるのだろうか、古の人たちもここを通ったのだろうか。長い年月をかけて最適な登山道が見つけられてきたのだろうか。もしかしたら最初は獣道だったり。

途中で鹿の爪後を見つけて、ここは動物たちが共存する場所だと悟る。私達の通れない道を簡単に通ることができる。遭難なんて知らない。都会の人間と違って、むしろ山の中の動物たちは先輩だ。想像がさらに広がる。

中々姿を表さない動物たち。実は彼らははじめから人間が山に入ってきたのを監視してて、見張りがこっそり偵察していたりしないか。後を追ってないか、など。宮沢賢治文学っぽい発想だけど、動物を擬人化して捉える心理すごく湧いてくる。それは彼らの存在へのリスペクトだったり、山における人間の孤独感の回避思考だったりする。

生き物は名前の通り生きているものたちだ。その共通項では人間も同じだ。彼らは腹が減れば食べて、眠くなったら寝る。山の中のシンプルな営みをすることで、同じ目線に立った気がする。

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そんなロマンを感じながら歩いた登山。

人それぞれ感じ方は違うかもしれないが、たった1泊ではあるが私は私の中の苦労のストーリーと新しい気づきを得た。この豊満な気持ちのざわめきは物語を読んだのに等しく、これは私しか知らない私の物語なのである。

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<info>

YAMAP

GPSで所在確認及び軌跡を確認できる素晴らしい登山アプリにも記録を残しています。

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夏の思い出

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