『「未来の学び」をデザインする―空間・活動・共同体』を読んで

『「未来の学び」をデザインする―空間・活動・共同体』
(美馬 のゆり、山内 祐平)2005 東京大学出版会

2005年出版とちょっと前の本ではありますが、
twitterで高橋一也(@kz8_takahashi)さんが
紹介していて気になったので、購入して読んでみました。

https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%81%AE%E5%AD%A6%E3%81%B3%E3%80%8D%E3%82%92%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%99%E3%82%8B%E2%80%95%E7%A9%BA%E9%96%93%E3%83%BB%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%83%BB%E5%85%B1%E5%90%8C%E4%BD%93-%E7%BE%8E%E9%A6%AC-%E3%81%AE%E3%82%86%E3%82%8A/dp/413053078X/ref=sr_1_1?hvadid=386514986547&hvdev=c&jp-ad-ap=0&keywords=%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%81%AE%E5%AD%A6%E3%81%B3+%E3%82%92%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%99%E3%82%8B&qid=1584874962&sr=8-1


中古での出品しかありませんでしたが、
買って正解でした。

これから求められる教育を考え、
「空間」「活動」「共同体」という3つの視点から、
学びの在り方を解説し、実践例を紹介しています。

この本では、「未来の学び」を
個人的な知識獲得のための活動ではなく、社会文化的インタラクション(対話)

実践共同体への参加の過程であると捉えています。

若干古い本ではありますが、
今読んでも学ぶところがたくさんある本です。

今自分が関心があるのが「空間」についてなので、
特に印象に残りました。

従来からある日本の学校の教室は、
「ハモニカ校舎」と呼ばれ、教室が南に面し、
北側の廊下に沿って櫛形で、横一列に並んでいます。

教室は独立しており、互いに干渉しない不文律ができあがっています。

教室の中には余剰空間がほとんどなく、
この状況が生徒に姿勢を正し、前を向き、
教員に注目させる効果を生み出しています。

また、教員のための一段高い教壇は、上からの教員の視線となり、
生徒に威圧感を与えます。

このような教室は、静的であり、受け身であり、画一的であり、抑圧的な空間で、
「学習」を「個人の知識獲得の行為」として捉えると、大変効率的です。

しかし、最初に書いたように、この本では、「未来の学び」を
「個人的な活動ではなく、社会文化的インタラクション(対話)や
 実践共同体への参加の過程」であると捉えています。

そうすると、従来の教室空間は「未来の学び」には適していません。

そこで、従来型の学習と、美術系大学の学習を比較し、
美術系大学の学習の特徴として、
①アトリエ的学習空間の利用
②リフレクションの実施
③ポートフォリオの制作
があります。

この美術系大学の学習を参考に、「未来の学び」に適した学習空間、
つまり「開放的な教室空間」を作る必要があるのです。

実際に公立はこだて未来大学の建設の際に、この考えが生かされ、
教室がガラス張りになったり、オープンスペースが作られたり、
グループ学習教室が作られたりしました。

そして、この新しい教室環境を根付かせ、
どのような考えの下にデザインされているかを制度として組み込むために、
プロジェクト学習を取り入れたり、大学内の教員の共同研究を行ったりし、
様々な壁をなくしていきました。

他にも「活動」や「共同体」について充実した記述がありました。
が、長くなるので、今回は「空間」についてのみ、
気になった部分をまとめてみました。

「空間」が学びの在り方を規定し、
「空間」を変えることで学びの在り方が変わっていくということが勉強になりま
した。

公立高校の現場で、「未来の学び」を実現していくために、
「空間」を整備していくことはなかなか難しい課題です。

狭い教室に40人の生徒がいて、ICTの環境も整っていません。
余剰教室も少なく、新しい教室をデザインしていくことも簡単ではありません。

でも、できることはないかと考えているところです。

例えば、少しでも教室内の空間を広げるために、
生徒の荷物を机の横にかけるのではなく、
どこか別の場所に置くことはできないか?
(机の移動の際に、机が軽くなってスムーズになるし、 机間巡視もしやすくな
る。
 机を動かしやすくするために、テニスボールを机の脚に付けている人もいます
ね。)

掲示物を極力減らして、掲示板の一角を付箋を貼って、
情報交換や考えを深めるためのボードにできないか?
(ホワイトボードでもよいが、お金が・・・)

講義室など稼働率の高くない教室を、
思い切ってグループ学習専用の教室としてリデザインできないか?

図書室を本を読む場所としてだけでなく、
プレゼンテーションをする場所として使えないか?

生徒のいる教室に教員が行くのではなく、
大学のように教員がいる教室に生徒が移動する形を作れないか?
(生徒の居場所である「教室」がなくなることで、デメリットもあるが、
 「教室」に居場所がない、居づらい生徒にとってはメリットもあるかも)


「お金がない公立高校ではできない。」とあきらめるのではなく、
できることを少しずつでも進めて、いろんなアイデアをアウトプットすることで、
アドバイスをもらって、学びの空間を変えて、
そして学びの在り方を変えていけるといいなと思います。


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