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服の素材(繊維)について考えてみませんか?~歴史編~

トムです(先日ミツバチ🐝が飛んでいるのを見て春の訪れを感じています)

いきなりですがクイズです
Q.繊維を一本の糸にすることを何という?
Q.天然繊維はどれくらい前から使用されているでしょう?
Q.エジプトのミイラは何に包まれているでしょう?
Q.化学繊維はどれくらい前から使用されているでしょう?
Q.「ナイロン」の由来について旧版webster辞典ではどう表現されているでしょう?

答えは最後に載せておきます

記事を書こうと思ったきっかけ

服を「健康の視点」で選ぶことの大切さを感じたのがきっかけです
現代では、体の不調を耳にする機会が増えたと感じます
病気の治療法は日々新しいものが生まれ、食事や運動など生活習慣に気を使っている人もたくさんいると思います

服はどうでしょう?
現代ではファストファッションが普及し、安く服を買えます
「このコーディネート素敵」
「この服おしゃれだね どこのブランド?」
上記の会話はあるものの「この服はどんな素材?」という会話をしたことありますか
私はつい最近までNoでした

草根木皮そうこんぼくひ これ小薬(草根木皮:漢方のこと) 
鍼灸 これ中薬
飲食衣服 これ大薬
身を修め心を治める これ薬源

中国の歴史書 書経より

漢方や鍼灸より、飲食と衣服こそ最大の薬だという言葉です
このことからも、衣服の重要性が分かります
前置きが長くなりましたが、繊維の定義と歴史を知ることから始めましょう

繊維について

繊維とは:細い糸状の形態を有する物質・材料
使用目的に応じて撚糸ねんし(1本の丈夫な糸にすること)で織り・編み加工され布等が生産される

この中で、アパレル素材に適する線維の条件があります

アパレル素材に適する線維の条件
・重量が軽い
・しなやかで加工・着用がしやすい
・無色または透明(染色しやすい)
・糸にしやすい、紡ぎやすい
・水に溶けたり分解しない(安定性)
・耐久性がある
・暑さ・寒さ・蒸れへ適応できる(快適性)

服地の基本がわかるテキスタイル事典より引用

繊維の分類

アスベストが天然繊維なのは驚きでした


ここからは天然繊維と化学繊維の歴史を簡単に解説していきます

天然繊維の歴史

1万年以上前から使用されている
・麻類、コットン、シルク、ウールは4大天然繊維
ミイラは亜麻布で包まれていた

産業革命(1760年から1840年)前のヨーロッパの主流線維だった
産業革命後はコットンが主流線維になる
亜麻はエジプトやメソポタミアで4000年〜5000年前から栽培されていた
エジプトは14世紀末まで亜麻の生産量世界一だった
リネンとは亜麻の薄地織物のことをいう

コットン(綿)

インダス川流域(原パキスタン)や南米のペルーで4500年〜5000年前から栽培されていた
インド産は大きな染色体をもつ2倍体(AA)
ペルー産は小さな染色体をもつ2倍体(DD)
コロンブスの新大陸(南北アメリカ)発見によってインド産とペルー産の交雑種が誕生する 4倍体(AADD)
この新種は従来のコットンに比べて繊維長が約2倍で非常に優れた品質だった

繊維の長さによって「長繊維綿」「中線維綿」「短繊維綿」に分類
一般に短繊維綿は低級、長繊維綿は高級とされる
長線維綿の有名なものとして「スーピマコットン」が挙げられる

日本での本格栽培は15世紀中頃(室町時代)からで、16世紀後半(安土桃山時代)には一般庶民も使用できるようになった

シルク(絹)

蚕の繭から取り出す
紀元前2698年に中国の神話時代(三皇五帝時代)に炎帝神農氏の夫人がやったのが始まりとされている
その約200年後、後黄帝の妃が養蚕の技起こし織機も発明した

この方法は長い間国外秘であり中国国内のみで生産されていた
製品の織物はシルクロードを通ってヨーロッパまで伝わる

外部に漏れたのは、5世紀頃ホータン国(現中国新疆ウイグル自治区)の国王の願いにより中国の王女を嫁にした時、冠の中に蚕種を隠して持ち出したのが最初とされている

もうひとつは、ビザンチン帝国と契約した2人のペルシャ人宣教師が中国での伝導の帰路、蚕の卵と桑の種を持っていた竹杖の中に隠して持って帰り、飼育に成功したとのこと
コンスタンチノープルが養蚕の中心地になったのはこのためである

日本では明治に生糸の製糸が盛んになる
「高等蚕糸学校」という専門学校を作り、技術の発展に努めた結果、世界一の生糸生産国になる

ウール(羊毛)

牧羊は紀元前8000年頃のメソポタミアですでに行われていた
10世紀〜11世紀の地中海貿易で「毛織物」は重要な商品であった
スペインとイギリスが毛織物産業で有名

有名なウールとして「メリノウール」がある
メリノ種からとれる毛で、世界各地に広範囲に分布し、最も良質なウールを一番多く産出する羊種である

日本では1887年〜1897年に羊毛工業が最も盛んになるが、これは軍需用毛織物の必要性からであり、その後の成長はほとんどなかった


化学繊維の歴史

・19世紀後半(1850年くらい)からの歴史=約200年ほど
・ポリエステル、ナイロン、アクリルは3大合成繊維

化学繊維については種類も豊富で、文献も長文なので人絹とナイロンについて解説します

人絹(レーヨン、キュプラ)

キュプラ

キュプラはスーツやコートの裏地によく使われています

発明の経緯はコロジオン(レーヨンの元)をこぼしてしまい、それが乾いたものが絹のようだったためである
当時、蚕の伝染病によってリヨン(フランス)の絹工場は壊滅の危機に瀕していた
有名な化学者かつ細菌学者のパスツールが防ぐための研究をしていた
その助手であるシャルドンネが、コロジオンをこぼしたことにより発明した

繊維化に成功し、その織物を1889年のパリ万国博覧会に出展
絹のような光沢と手触りでありながら、洗濯可能という優れもので大評判となり、グランプリを獲得
万博での成功により、工業化の資金も集まり1892年に世界初の人絹工場生産が行われた

1889年のパリ万博はフランス革命から100周年であり、エッフェル塔が建設された年でもある

ナイロン(Nylon)

アメリカのデュポン社によって開発
ナイロンの由来としてNo Run(伝染しない)、Nil(虚無)など諸説ある
旧版Webster辞典では"Now you look on Nippon."となっている

ちなみにポリエステルやポリエチレンなどにつく「ポリ」の意味は
モノマー:単量体 例:プラスチック1つ
ポリマー:重合体 例:プラスチックが2つ以上くっついているもの

主な引用と参考文献および書籍

梶慶輔:「繊維の歴史」https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber/59/4/59_4_P_121/_pdf/-char/ja

宮沢哲:「天然繊維と合成繊維の化学」https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/66/9/66_444/_pdf/-char/ja

閏間 正雄:「服地の基本がわかるテキスタイル事典」

大西基之:「メンズ・ウエア素材の基礎知識 毛織物編」

いかがでしたか?
詳細が気になる方は、上記の文献や書籍をチェックしてください


最後にクイズの答え合わせです

Q.繊維を一本の糸にすることを何という?
A.撚糸ねんし

Q.天然繊維はどれくらい前から使用されているでしょう?
A.1万年以上前(から使用されている)

Q.エジプトのミイラは何に包まれているでしょう?
A.亜麻布(に包まれている)

Q.化学繊維はどれくらい前から使用されているでしょう?
A.約200年ほど前(から使用されている)

Q.「ナイロン」の由来について旧版webster辞典ではどう表現されているでしょう?
A.Now you look on Nippon.

途中のヒントに気付きましたか?

長文を読んでくださりありがとうございました
繊維から服を選んでみるのも楽しいですよ

ではまた!

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