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文芸作品の楽しみ(応用編4)

存在とは何か。存在についての問いこそが古代から続く人間の形而上学的思考の中心である。哲学における現時点での最終的なまとめとしては、存在という概念の意味は現前性の明証的な真理のことであり、現前性の理解については様々な解釈があるとは言え、ロゴス中心の解釈よりも、当初からスピリチュアルな感覚の芸術的感受性の方が優勢になっている。20世紀後半にはロゴス中心主義に対するエクリチュール中心主義の立場からの形而上学批判が行われたが、古代から現前性とはイデアという論理的には矛盾した観念についての思考のことに他ならず論理的には理解できないように鍵をかけられていたものだった。サイバネティクスや情報工学が発達した現在では、手紙での文字でのやり取りだけでなくテレビ電話や写真や画像や動画のやり取りも瞬時に行えるので、パロールをそのまま検索したりや記録したりすることができるようになったので、文字と会話の概念は変化し始めており、総合的な表象は文字だけのものや会話だけのものよりも価値があるものと見なされるようになっている。書かれたものにこそそもそも論理的形式が必要なのであって、論理に対する考えも、ジャックデリダの非合理主義に基づく文字中心主義の基づいている論理主義的論理観だけではパロールの現前性を捉えきれなくなっている。

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