私、悪魔になっちゃいました「#12/独りの叫び」
奥の方でみんなが怯えている姿が見えた。何が起こっているのかは私にもすぐわかった。
『最終形態』になっていたのだ。
今までの姿は、どっちかというとこう、コスプレのような感じをしていた。
角や尻尾も生えていたけれど、それはどこか可愛さも持ち合わせたものだった。
けれども今、そばにあった手鏡を覗きこんだ先に映っていたのは、それとは似ても似つかない『悪魔』の姿だった。
否、『怪物』といってもいいかもしれない。
目は不気味なまでに赤く染まって鋭く形を変えており、角はより大きく、尻尾も太いものが生えていた。
「みんな…逃げないでよ」声も普段なら出せないような、重たいものになっていた。
無人のオフィスに、重い声が響き渡る。
「戻ってきてよ!!」ボリュームを上げて、私は必死に訴えた。
さらに大きく響いたのみで、何の変化もなかった。
静寂が流れる。それは、この未曾有の事態にふさわしくない程の静かさだった。
私は一体、何をしたというのだろうか。意味がわからなかった。
次第に、先程の私の叫び声が頭の中を巡るようになってきた。
「逃げないでよ」「逃げないでよ」「戻ってきてよ!!」と、繰り出した幾つもの叫び。
それらがだんだん、私自身に返ってくるようで、とても辛かった。
次第に、私は叫びの中に取り込まれていくかのような感触を得た。
視界がどんどん暗くなっていく。
一体どうなるのだろう。
(続く)(571文字)
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