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スタンフォードが中高生に教えていること②

前回の続きになります。(①はこちら↓)

第4章では「子どもの才能の伸ばし方──8つの正解TIPS」と題して、以下のヒントを読者に与えてくれます。

これは正直教師としてというよりも、親として刮目するような内容が多々ありました。

TIPS1 教育でなくて学育を──学ぶ側の子どもたちに焦点をシフトさせる
TIPS2 ステレオタイプの脅威に気を付ける
TIPS3 間違えに萎縮しない力を育てる
TIPS4 子ども自身が話して、決めて、考える機会をたくさんもうける
TIPS5 いろんな学び方で学ばせる
TIPS6 「目標設定」と「自己評価」で効果的な学びをサポート
TIPS7 自分がロールモデルであることを忘れない
TIPS8 子どもは自分で育てず、社会の多様性に育ててもらう

TIPS3の「間違えに委縮しない力を育てる」というのはわかっていてもなかなか難しいと実感している今日この頃です。

自分の子供には「勉強や生活の中でいっぱい間違えていいんだよ。間違えてそこから学べば成長するんだよ」と言い続けていますが、当然子どもたちは本能的に失敗や間違いを避けようとします。だからこそ子どもが小さいうちは大人がそのような環境を作らなくてはいけないのですが、その環境づくりがなかなかうまくいかなかったりします。

振り返ってみれば自分もチャレンジアンドエラーを繰り返して成長していったように感じます。自分の子供たちにもやはりチャレンジをする気持ちと失敗してもくじけない心(レジリエンス)を持って欲しいなぁとこれを書いていて思いました。

TIPS4の「子ども自身が話して、決めて、考える機会をたくさん設ける」も結構刺さりました。これも親として悩んでいることの一つだからです。

子育ての究極の目標は「子どもを自立させること」だと思っています。言い換えると、自分たちで生きていくのに必要な力を身につけさせることが親の使命だと思います。

子どもが自立するためには、自分で考え、行動できるようにならなくてはなりません。まず基盤になるのは考える力、思考力です。しかし、自分の子供たちに思考力を育む教育ができているかというと、正直自信がありません。

子どもたちはまだ小学生なので、これからいかようにも変わっていくのはもちろん理解しているのですが、もっとできることがある気がしてなりません。(逆に言うと子どもたちのポテンシャルを親として引き出せていないんじゃないかと不安になります)

例えば、本書には、「あくまで話し手は子どもで、自分は聞き手として積極的に会話に参加しながら、子供の話をまとめて繰り返したり、質問したり、共感を示したりすることで、子供が自分の考えを表現しやすい対話を心がけましょう」と書かれています。

このようなスキルは教育のプロとして当然持ち合わせていると自負していますが、高校生相手ではなく自分の子たちにその力を発揮しているかというと、不十分だと言わざるを得ません。

また、本章には「自己表現」だけではなく、「自己決定」できるように環境を整えてあげることも重要だと書かれております。「自己決定権」を与えることに関しても、やはりまだまだその機会が足りないと思っており、今年1月から子供たちに自分たちで目標を立てさせ、その成果を定期的にチェックさせることにしました。これは社会人にとって当たり前のPCCAサイクルで、とても緩やかにPDCAサイクルを回させています。

目標を立てるときの注意点としては、

①できなそうな目標は立てない
②目標は数値化するなどできるだけ具体的にする


などを理解してもらいました。

最初は簡単な目標でいいので、とにかく目標を達成して自己肯定感を感じてい欲しいと思っています。これはTIPS6「「目標設定」と「自己評価」で効果的な学びをサポート」で書かれている内容と合致していました。

この章は、教師としての自分でなく、親としての自分の教育力を考え直すいいきっかけになりました。人様の子供ばかりを幸せにして、自分の子が幸せになれなければ本末転倒甚だしいと強く思いました。もっと自分の子供たちとの対話を増やし、彼女らが自立できるように手助けをしていきたいと思ったのでした。(ただ、思春期に入るとなかなかその接し方も難しいのですが・・・(;´・ω・))

そして、第5章では以下のような世界の教育のトレンドについて詳述されているのですが、これらについてはほぼすべてこれまでにnoteで書いてきているので、もしご興味がある方は↓の投稿をお読みいただければ幸いです。

一人ひとりに合わせたオーダーメードの学び──パーソナライズド・ラーニング
学びは能動的に作り上げるもの──アクティブ・ラーニング
教科書がなくなる日が来る──プロジェクト・ベースド・ラーニング
学習法の科学的正解が明らかに──学びの科学
手のひらサイズの教室──EdTechとオンライン教育
教育は自分でデザインするものに──ディストリビューテッド・ラーニング

学びの個別化(イエナ・プラン)

PBLについて

EdTechについて

そして「学びの科学」のページでは、最先端の認知科学や脳科学を解明された以下のようなファクトをまとめています。これらは筆者である星さんの教育観の根底にあるのは間違いないと思います。

学びの科学のすごい結果リスト

・感情と学習の深い関係:感情の能力を高めると成績が上がる。ソーシャル・エモーショナル・学習の成果。
・学習スタイルはない:「視覚から学びやすい」「読むと学びやすい」などの「個人の学習スタイル」というコンセプトは脳科学的に根拠はない。⇒人ぞれぞれ。
・いろいろな仕方で学ぶのが良い:特定の学び方よりも、いろいろな学び方をした方が脳の違う箇所が活性化されて学習効果が高まる。
・記憶の呼び起こしが効果的:学んだことを思い起こす単なる復習や読み返しよりも断然効果的。テストは学びのツールとして効果的に使うべき。
・間違いが大切:間違えているときに脳は活性化している。子供にそのことを教える。
社会脳:他の人とやり取りすると脳の実行機能の発達が活性化。他の人たちと一緒に学んだり、他の人たちが関連するような学び方をするのが学習効果大。

学習習慣の定着方法についてはこちらに書きました。

そしてこれら事項を踏まえて、最終章で筆者は「教育のミライ」について展望を記しています。

まず、学校は今後ますます多様化し、校舎なし、週の半分休み、多国籍キャンパスを持つ学校も出てくると述べています。

校舎なし、多国籍キャンパスと言えば、ミネルバ大学が世界的にも認知され始め、新しい教育の形を示しています。テクノロジーの進化は今後もものすごいスピードで進んでいくことを考えると、教育にも破壊的イノベーションが起こることは間違いないと言えます。

上記の変化に伴い、教員の役割も今後どんどん変わっていきます。本来はすでに変わっていなければいけないのですが、まだまだ旧態依然、思考停止している学校や教師が多いのも事実です。(日本だけでなく、世界でもそうです)

EdTechの導入と生徒の学びの個別化が進むことで、教師はTeacherというよりもCoachやFacilatatorの役割をより求められるようになっていきます。同時に教師もパラレルワーク(副業)やギグワーク(数時間単位の短い仕事)なども当たり前になってくる可能性も十分あります。

社会が変わり、テクノロジーがさらに発展していけば、人生や生活のニーズ、価値観、世界感がアップデートされます。そうなれば、教育も当然変わる必要があります。我々教育者は次代を担う子供たちの成長と社会の発展に責任を負う者として誰よりもその変化に敏感でなくてはいけないと思います。その使命感を忘れずに明日も仕事を頑張ります。


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