私的偏愛録 其の六 草間彌生

ある日、わたしは草間彌生の特集番組を観ていた。それまでは、あいちトリエンナーレ2010で観た作品の人、くらいの認識だった。何となく録画した番組に映った彼女の姿に、わたしはぐっと惹きつけられてしまった。

生きるのが辛い、というような言葉を吐き出しながら、力強く作品制作に取り組む彼女の姿は、わたしの目に眩しく映った。生きなければならない理由に真正面から向かっていくその姿に、なんだかくらくらしたのだった。

それから社会人になって、定期的に草間彌生作品を観に行くようになった。美術館や芸術祭に足を運ぶことで、また気になる作品や作家が増えていく。そしてまた、それらを求めて、美術館に行く、芸術祭に行く、関連映画を観る、関連書籍を買う…。

わたしにとって草間彌生は、これから無限に広がるであろう芸術文化への興味関心のはじまりであったのだ。

わたしがいつの日か、美術作品を購入したり、私設美術館を建てたりするくらいまで、その無限の網が広がり続けて欲しいな、なんてひっそりと願っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?