原子力・ウラン投資その4:ウラン

こんばんは、とまとです。
(すみません。カザフスタンの記載が間違っていたので修正しました)

第4回目は投資対象としてウラン鉱山開発会社が多い中で、ウランについての基本的な情報をエネルギー白書2023等からみていきましょう。

世界のウラン生産量

世界のウラン生産量(2021年)(出典:エネルギー白書2023 【第222-2-5】)

まずは世界のウラン生産量からみていきましょう。2021年のデータですが、世界全体で年間48,332tUとなります。この数字も覚えておいてください。トップはカザフスタンで45.1%と半分弱をしめます。その後、ナミビア、カナダ、豪州、ウズベキスタン、ロシア、ニジェール、中国、インドと続きます。カザフスタンはご存知のようにロシアの同盟国、ウズベキスタンも旧ソ連国となります。ニジェールはクーデターがあったことは記憶に新しい政情不安の国となります。これをみてわかるように、ウランの生産は結構米国や西側諸国にとっては不安定な国に依存していることがわかります。

ちなみに、カザフスタンがなぜ多いかというと、下記のオッちゃんのツイートがあるように安いコストで生産できる地中でウランを溶かせるタイプの方法を使っているからです。


世界のウラン埋蔵量


世界のウラン既知資源量(2019年)(出典:エネルギー白書2023 【第222-2-6】)

次にウランの埋蔵量をみていきます。一番重要なのは、合計8,070,400tUということです。年間生産量が48,332tUということを考えると、世界にはかなりのウランがあることがわかります。今のペースで100年以上あります。それもこれは既知の資源量で、探索すればもっと増える可能性があります。重要なことはウランは枯渇資源ではなく、生産に十分な投資ができれば、十分量生産できる資源なのです。そもそも、枯渇資源で原子力を3倍にしようという案は出てこないわけで、十分にある資源を使うのが原子力となります。希少資源の取り合いをイメージされた方には残念ですが、そういう資源となります。

国別では、豪州、カザフスタン、カナダ、ロシア、ナミビア、南アフリカ、ニジェール、ブラジル、中国、インドなどにあります。

ウラン価格の推移

ウラン価格について、原子力発電所は1年とかの単位で動いておらず、稼働し始めたらかなり長い年月稼働するので、ウランの購入も複数年単位の長期契約がメインとなります。1年使って、来年分ないとか言われたら困りますもんね。長期契約は企業間の取引なので、その条件も様々で統一的な価格は難しいですが、CCJが長期契約価格の推移を出しています。

大部分は長期契約ですが、スポット市場もあります。こちらでウランを購入することも可能です。毎日出ているスポット価格はこちらの価格となります。ウラン鉱山会社や金融会社、投資家などが取引しています。ウラン鉱山会社は生産前の場合、スポット市場で買うこともあります。これはウラン鉱山会社は長期契約で締結するのですが、開発できなかった場合に納品できることを納得させるために、予めスポット市場で買付を行っておくためです。

ウランスポット価格の推移は下記のようになります。

ウラン価格(U3O8)の推移(出典:エネルギー白書2023 【第222-2-7】)

いわゆる、ウランスポット価格と呼ばれているものの推移です。白書のデータなので、最新の価格はありませんが、現在(2023/12/9)は80ドルを超えていますので、このグラフから2倍近く上昇したことになります。史上最高値は2007年6月の136ドル。リーマンショックの前年となります。そこからバブルが弾けて急落するも2010年にはいってまた上昇に転じたときに、福島の事故が起きます。そこからはウラン価格の転落の時代に入ります。ようやく、それが最近上昇に転じてきたという経緯があります。

直近なぜウラン価格が上昇しているか?

現在(2023/12/9)のウランスポット価格が80ドルを超えているという2007年より前を彷彿とする上昇を見せていますが、その理由はなんでしょうか?ウクライナ関連にしては、原油などが高騰して、その後の下落した後の現状を考えるとピンときません。何か複雑なものが動いているのでしょうか?それとも2050年3倍計画に向けて、先回りして買い込んでいるのでしょうか?さすがにそんな先までみて買う人はいません。今価格が上がっている理由は、実は理由は単純なんです。下記のオッちゃんの言葉に集約されます。

そうです。ウランが足りないからスポット価格が上がっているのです。一件落着。めでたし、めでたし。

このツイートで書いてあるとおり、2022年時点で需要が150-200mlbに対して、ウラン鉱山から出てくるウランは135mlb。去年もそして今年も需要が供給に対して多いのです。

とはいえ、なんとなく腑に落ちない人もいるでしょう。前に述べた通り、ウランは世界にたくさんあるのです。足りなくなるならば、それだけ採掘すればよいだけ。多少ならともかく、価格が2倍になるほど、足りないというのはどこかおかしいのではないだろうか?その疑問に対して、その1から今回までの知識を総動員して、考えていきましょう。

まず世界の原子力発電量は福島以降大きく下がったことはその1でやりました。原子力発電は長年動かすものなので、それを想定してウランを確保していたはずです。その稼働が大幅に減ったということは生産していたウランが余剰になっていきます。そして、スポット価格は当然余るので暴落して、2010年代後半には20ドルまでいきます。20ドルは1980年代のチェルノブイリの前の水準です。その後のインフレ率を考えればとてつもなく安い水準です。

となると、何が起こるのでしょう?ウラン鉱山会社は当然新しい鉱山を開発するのをやめるし、既存の鉱山もコスト割れで操業をやめていきます。実際に福島以降に大型の新規ウラン鉱山はゼロです。すでにあった鉱山もずっと採掘を続けるとトンあたりの埋蔵量が落ちていくので、新規鉱山による世代交代は必要なのに、その投資をしてこなかった現状があります。

そもそも、ウランの生産量と埋蔵量のデータをみて違和感はありませんでしたか?豪州やカナダにウランがあるのに、生産の45%がカザフスタン、ナミビアが11.9%、ウズベキスタン、ニジェール。豪州8.7%やカナダ9.7%は埋蔵量に対して少なすぎです。そうなんです。安いコストで生産できるところしか生産していないのです。アメリカの既知埋蔵量は1.3%になっていますが、今後個別株の回で出てきますが、アメリカのプロジェクトが出てきます。ウラン価格が高ければ、もっとたくさん開発されていたのだと思います。
(→間違いでした。しばらくしたら削除します。カザフスタンが多いのは安く生産できる鉱法が理由)

その後、起こったことは、2014年RE100発足で2050年までに再生可能エネルギー100%を目指す。2015年SDGs採択、パリ協定採択。ゼロカーボンに向けた社会の流れが進んでいきます。必然の流れとして、一度落ち込んだ原子力発電が再び上昇を始めます。ゼロカーボンには原子力による安定した電力供給が必要なことはその2でみてきた通りです。アジア勢も原子力発電に注力しはじめています。

それでもウラン価格はなかなか上がりませんでした。じりじり上がるものの、ウクライナ侵攻があって、40ドル超えはいくものの、大きな上昇はみられません。これは、前のどこかで書きましたが、ウランは貯蔵できる特徴があるからです。ウランの発電所での消費がウランの生産量を上回っても、ウランの在庫がある限り、発電所では問題となりません。仮に足りなくなってもプールされているものがあるので、スポット市場から買うことができます。そして、気づくとその貯蔵がなくなっている、そのXデーがオッちゃんの前のツイートにある。2023年までは大丈夫なはずという言葉につながるのです。そして、今は2023年12月。今年の後半にスポット価格が上がったのは必然の流れだったのです。

発電所はストックしていた貯蔵がなくなり、スポット市場をみたら売り物があまりなく、びっくりな状態。個人的に、John Quakes先生のこのGIF動画が発電所の心境をとてもよく表していると思っています。

鉱山開発には長い年月がかかります。現在その2でみた新しいウラン鉱山会社が操業するにもここから数年かかります。操業をやめたものをもう1度再開するのにもそれなりのコストと時間がかかります。折しも、世界的な高金利の時代。借金して投資をするのは避けたいというのが経営者の心情でしょう。

結局、最終的にウラン価格はどうなるのでしょう?前に述べた通り、ウランは埋蔵量は十分にあります。ウラン鉱山開発を続ければ、時間はかかるかもしれないですが、いずれウランの需給バランスの問題はいずれ解決する問題です。あとは、その需給が満たすウラン価格がいくらか?(おそらく今の価格ではないはずです)すぐに生産が増えるわけではないので、どれぐらいの時間がかかり、その間に価格がどうなるか。そのよみが投資の争点となると思っています。


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