私は走っていた。
そして、焦っていた。

この先にある目的地まで、私は　
どうしても日没までに辿り着かねばならない。

けれど、それは死を意味していた。

日没を過ぎれば、友の死。
日没の前であれば、私の死。

どちらも耐え難い。
できれば、どちらも避けたい。

そこで私は考えた。
ちょうど日没と同時に到着したらどうだろうか、と。

友は殺せまい。
私も殺されまい。

････甘い考えだろうか。

私は走りながら腕時計の時刻を読む。
目的地点における日没時刻は計算済みだ。

私は走る。
とにかく走る。

途中、目の前に亀が歩いていた。

私が現在の亀の位置に辿り着いた時　
この亀は少しばかり前進しているはずだ。

その少しばかり前進した位置に私が至った時　
さらにほんの少しばかり亀は前進しているはずだ。

････などと考えているうちに　
私は亀を追い越してしまっていた。

私は走る。
ひたすら走る。

脚が痛い。
胸が苦しい。

頭が割れそうだ。

それでも走る。
それでも私は、走り続ける。
　

Before Sunset

I was running.
And I was impatient.

To the destination in the future,
I must reach by sunset by all means.

But that meant death.

After the sunset, the death of a friend.
Before sunset, my death.

Both of them are unbearable.
If possible, I want to avoid either.

So I thought.
I wonder if I arrive at the sunset at the same time.

They can not kill a friend.
I will not be killed either.

Is it a sweet idea?

I read the time of the watch while running.
The sunset time at the destination has been calculated.

I will run.
Run anyway.

On the way, a turtle was walking in front of me.

When I reach the current turtle position,
this turtle should have made a bit of progress.

When I arrived in a position that made a little progress,
the turtle should be moving a little further just a little.

While I thought that I was overtaking the turtle.

I will run.
I just run.

My leg hurts.
My chest is painful.

My head seems to break.

Still run.
Still I will keep running.