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ショートストーリー『プラットホーム』

  《プラットホーム》


向こう側のホームを、
西陽がふんわりと照らしている。

キラキラと急行が通過すると…突然、
そのオレンジ色の陽射しの中に、
懐かしい彼女の姿が現れた。

彼女の少し眩し気な、
夕陽にうっとりした表情に、
僕は思わず微笑みかけた。

だが、
四本のレールを隔てて立っている彼女には、
それは届かないみたいだ。

どうやら今日は、
コンタクトレンズをしていないらしい。

声をかければ届く距離だ。
僕は軽く息を吸い込んだ。

その時、
彼女がこっちを見た。

しかし、
やっぱり僕がわからないようだ。

じゃまをしているのは、
もしかして夕陽のヤツかも知れない。

その夕陽は、
彼女の頬を美しく染めている。

彼女は無表情のまま、
しばらくの間僕と見つめ合っていた。

少しはにかんで小首を傾げたあの頃の彼女は
もういない。

二年…。

流れ去った月日を思い出す余裕もなく、
彼女の電車がホームに滑り込んで来た。

続いて僕の電車も。

そして僕と彼女は、
電車の二倍のスピードで、
四本のレールの幅よりももっと遠くへと、
離れて行った。


            End


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