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ショートストーリー『Cafe 1430』

    《 Cafe 1430 》


とあるカフェ…。14時30分ちょっと過ぎ。

また会ったネ。
遅いランチ?
今日も、一人で?

なんか、とっても疲れてるみたいだネ。
自分で肩を圧したり、首筋を揉んだり、
時々背中を伸ばしたり…。

他のお客が出入りするその向こうに、
そんなキミを見ても、
何ともしてあげられないのがもどかしい。

時折窓の外を、
ちょっと憂いをたたえた目で
ボーッと眺めたりして、
一体何を考えているのだろう。
ふとキミの心の中、覗いてみたくなる。

一度意識してしまうと、
どうしてか、
キミの仕草のすべてが気にかかって来る。

キミのテーブルとボクのテーブルは、
フロアの対角線、
向こうとこちらのコーナー同士。

少し遠過ぎて、
もちろん二人はテレパシストなどではなく、
お互い、心の中などわからない。

もしテレパシーで話せたら、
ボクはまず何て言うだろう。

「キミ、ステキだネ」
「何て名前?」
「よかったら、
 これから二人で公園へ花見に行かない?」

そんなことを考えていたら、
「さ、休憩終わり!」…みたいな感じで、
キミは立ち上がり、ジャケットを羽織った。

(あっ、待ってヨ! まだ行かないで!
 もっとキミを見ていたいんだ)

と、心の中でボクが叫んだ時、

えっ? というようにキミは一瞬動きを止め、
顔を上げた。

そして、少し首を傾げると、
すぐまた元のワーキングガールの顔に戻り、

ジーンズのよく似合う長い足で、
颯爽と店を出て行った。


              End



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