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「人生の先」を見せてもらっている

私の勤める老人ホームは入居者が130名ほど。入居する際に、その人の生い立ちやどのような人生を歩んできたのかを聴き取り、入居情報としてスタッフは共有する。

例えば、山口県で生まれ育ち、地元の企業に就職して技術職で腕を磨き、30歳で結婚し2人の子供に恵まれて…みたいな情報だ。
その中でインパクトが強かったのは、

「宝くじで高額当選し、それが原因で一家離散」

「有名企業の研究職で特許をとる活躍をしていたのに、母親が亡くなったことでアルコール中毒になりアルコール性の脳症に」

「東大出身で夫は京大の名誉教授だが認知症が進み路上で夫と大喧嘩をして何度も通報」

「光ファイバーの研究者だったがゴミ屋敷で埋もれていたところを妹に救助された」などなど。

子供が全く面会に来ない男性もいた。親子関係が最悪らしかった。なぜここまで拗れてしまったのだろう、もう修復できないのか…と一瞬考えたが「俺が建てた家になんで帰れないんだ!」とかパワハラを思わせる「ザ・昭和の頑固オヤジ」発言が多く、家族関係悪化の原因はこういう事も一因なのだろうと想像する。
昔は、いくら嫌いでも役目は果たそうとする子供が多かった印象があるが、最近は本当に来ない。「死んだら連絡くれればいいです。」という家族も実際にいるのだ。誰も面会に来ない男性の最期はやはり寂しいものだった。

色んな人生があるなあ…私はアラフィフだけど100歳と比べたらまだまだヒヨッコ。
多くの生き方を見せてもらえるのは本当に有難い。この仕事のスペシャル特典だと思う。
お手本にしたいのは、周りの人を大切にしてきた人だ。最期の時には与えた分の気持ちが返ってくる。死ぬ時に感謝されたら、それは最高の冥土の土産じゃないかな。

私は(バツイチで)夫とは添い遂げられなかったから、家族を大切にする事が、時には難しいと知っている。
でも忙しさにかまけて、高齢の両親、子供、同僚、疎遠になっている友人も、いつでも会えると油断するといつの間にか失う事になるのかもしれない。

最期に後悔しないためには、毎日、ひとつひとつを大切にする事を忘れないでいよう。



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