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個人情報を伏せてインカムを使うとこうなる

はじめに、インカムとはイヤフォンとマイクを使って会話ができる通信システムで、正式には「インターコミュニケーションシステム」。

インカムは複数の同時接続でありながら、双方向の同時通話が可能できる。また送話者と受話者が同時に発信することができ、それを多人数に同時に届けることができる。

私の勤務する有料老人ホームでは、ネックスピーカー型のインカムを使用している。

ネックスピーカー

首にかけて使用する。当初は面会に来た方から、なんで皆、首にマッサージャーをつけてるんだろうって思ってました、とか言われた。

以前はイヤフォン型だったのだが、雑音がダイレクトに耳穴に飛び込んでくることも多く、とてもストレスだった。
ネックスピーカーに変更してからは、そのストレスからは解放されたが、スピーカーからの声が第三者(入居者、面会者、外部業者など)に聞こえてしまうという問題があり、入居者の氏名や、状態が特定されないように配慮した言葉を使用するようにと、いくつかのルールができた。

▪️氏名の代わりに居室番号
▪️排泄については「1番」
▪️転倒については「2番」
▪️緊急事態は「9番」
その他、具体的な情報は発しないルール。

例えば転倒した入居者がいたとして、看護師を呼ぶ場合には、
「ナースさん、401が2番です。お願いします。」

食事前のインスリン注射は済んでいますよ、と看護師から担当のケアスタッフに伝える場合は、
「6階担当のケアさん、607の食前の対応は終わっています。」

事情が込み入って説明しにくい場合は、
「ナースさん、320までお願いします。」と呼ばれたりする。しかしこれだと内容が全く分からないので、
「処置カートは必要そうです?」とか
「バイタルの測定は必要そうですか?」と探りを入れてから準備して向かう。
もはや便利なのか不便なのか分からない。

「ナースさん、405にお願いします。見て欲しいものがあります。」なんて呼ばれると、一体何を見せられるのだろうと、ちょっとドキドキしたりする。こういう場合は、血便や床ずれが出来てしまった、という報告が多い。たまに意識レベルが低下していることも(これは9番で呼んで欲しい!)。

有効なのは人を探す時や、同じ要件を複数人に伝えたい時だ。

「全体発信です。601の方、お風呂の順番なのですが、居室にいないので見かけた方は教えてください。」と流せば、ほとんどの場合すぐに見つかる。

「フリースペースで新聞を読んでいたので、お声かけておきます。」とか
「先程、コンビニにお出かけされました。」と見つけたスタッフからの反応があれば、居室担当にもお風呂担当にも伝わる。

真偽不明だが、インカムのやり取りを本社の人間が時々チェックしているという噂もあって、割とスタッフは丁寧な対応が出来ている。

居室番号で呼ぶのだから、処置内容を言ってもプライバシーは守られるのでは、と思うのだが「本社からの通達」はなかなか手強く、この暗号のようなやり取りは今日も続いている。


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