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老人ホームの居室に監視カメラをつける夫②

夫は往診の中止を申し出た後、3か月に一度は大学病院の外来に本人を連れて行った。
受診の後、診察の結果を施設には伝えず、頓服で処方された下剤について記録と使用した数が合わない等とクレームをつけていた。

病状は徐々に進行して、車椅子に乗車したままのけぞるような姿勢をとったり、左右に上半身を乗り出して車椅子ごと倒れたりしていた。排泄や食事に関しても集中が続かず、食べてくれない事もあった。

夜間ベッドから転落するという事故が起きた頃、夫から「心配なのでカメラをつけて見守りたい。」と言う申し出があった。
担当のケアマネジャーは当時の施設長に相談し、何がどうなったのか居室に監視カメラを設置すると言う行為を許諾する事になった。
カメラは計3台設置され、夫による監視が始まった。

夜間、トイレに連れて行く時間がイレギュラーになると夫は施設に電話を入れ、同じ時間に連れて行けと指示を出し、ある時はオムツ内に排泄している様子だから早く交換しろと催促した。

Aさんは決して介護しやすい状態ではなかった。トイレの介助をする為に便座に座らせようとしても、立位のまま動かなくなったり、食事の時間も直ぐに飽きてしまい車椅子を足で漕いでどこかへ行ってしまう。どこかに行くだけならいいが、目を離すと転倒したり、他の入居者に車椅子で体当たりするなどの危険行為があり、介護スタッフは手を焼いていた。意思疎通がほぼ図れない状態だった。

そんな中、ある事件が起こった。

続く

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