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Nature Briefing 2023/06/26

Neuroscience loses consciousness wager
意識に対する賭けの勝敗―神経科学が敗北

意識についての数十年にわたる賭けは、哲学が勝利しました。1998年、神経科学者のクリストフ・コッホは、2023年までに研究者らが脳がどのようにして意識を生成するのかを発見するだろうと哲学者のデイビッド・チャルマースと賭けました。意識については 2 つの主要な仮説があります。1 つは、意識は特定のタイプの神経接続によって形成される脳内の「構造」であるとするもの、もう1つは、情報が相互接続されたネットワークを通じて脳の領域に拡散されるときに発生するというものです。6 つの独立した研究室からの研究結果は、どちらの仮説とも完全には一致しませんでした。未だ明確な発見に至っていないということからチャルマース氏が勝者と宣言され、約束のワインを楽しみました。
元記事:Nature

Science philanthropists die in sub accident
科学慈善家が潜水事故で死亡

タイタニック号の残骸を調査する潜水艦タイタンが爆縮して乗客が死亡した事故ついて、乗客のうち2名はパキスタンで著名な科学慈善資金提供者の家族でした。シャーザダ・ダーウッド氏とその息子スレマン氏は、工科大学、科学に重点を置いた女子学校、そしてパキスタン初の現代科学博物館を設立したダーウッド財団の一員でした。
元記事:Nature

⇒本事故は運営会社OceanGate Expeditionsにより用意された潜水艇の安全面に問題があり、しかも以前から安全性に懸念点があったという報道がたびたびあったという。潜水艇タイタンは資金節約のため、水深4000mまで潜水する潜水艇の一部を水深1300mまでしか耐えられない設備で補っているなど設計に杜撰な部分があり、2018年には解雇された元社員から内部告発されていた。
TheNew York Times 2023.06.20:OceanGate Was Warned of Potential for ‘Catastrophic’ Problems With Titanic Mission 
なお、日本の深海調査艇「しんかい6500」については、JST(日本科学技術振興機構)提供のこちらの記事で構造強度基準を「設計深度×1.5+300m」とかなり余幅をもって設計されていると書かれている。磯崎氏の中国に対する「とにかく事故だけは起こしてほしくないという思いで…」という部分に対して、親心子知らずという言葉が頭をよぎる(まだ起きてないが)。
「有人潜水船、掘削船に注力 中国の海洋開発技術(磯﨑芳男 氏 / 海洋研究開発機構 海洋工学センター長)」
「しんかい12000」プロジェクトは白紙に戻ってしまったようだが、再度立ち上げてほしいし、現在JAMSTECではレアアース鉱脈の開拓と発掘に注力しており、そちらに使われる無人調査艇などの報告が好調なので今後に期待したい。

US abortion bans starting to take health toll
中絶禁止の米国で健康被害が出始めている

ロー対ウェイド事件(※1973年 米国の最高裁判所により、米国全州で中絶が合法化された判決)の逆転から1年が経過し、米国では中絶可能機関が減少し、人々の健康に悪影響を及ぼし始めている。1973 年の画期的な判決により、数十年にわたり中絶の実施が保護されてきました。月当たりの中絶の平均件数は現在約3%減少しており、禁止されている州では大幅に減少し、それに対応して中絶が許可されている近隣の州では増加しています。また、医師が適切に治療できなかったために、命に係わるような妊娠合併症発症の兆候が見られる人もいます。例えば、胎児が自力で生きられるようになる前に破水した人に対し、危険な感染症を防ぐことができる中絶を勧めることなく帰宅させるなどの事案が起こっています。
元記事:Nature

⇒ロー対ウェイド事件を含むアメリカの人工妊娠中絶に関する論争はWikipediaでもある程度読むことができる。https://ja.wikipedia.org/wiki/ロー対ウェイド事件

 人工妊娠中絶に関する問題は、倫理的に「胎児をどのタイミングで一人の人間として扱うか、その胎児の命を人為的に絶つ行為は殺人となるかどうか」という部分が争点となっている。アメリカ合衆国においては人工妊娠中絶については政治的にも必要以上に大きなウェイトを占めており、キリスト教主体のプロライフ派(受胎から胎児を個人とみなし、人工妊娠中絶に反対し必要に応じて養子縁組を推奨する)とプロチョイス派(人工妊娠中絶を女性の権利として擁護し、加えて中絶禁止は出産の強制という男性社会のつくる女性差別の一種と考える)に立場が大きく二分されている。 2022/06/24、アメリカ連邦最高裁は、人工妊娠中絶について各州が中絶を違法とすることを認める判決を出した。(Forbs Japan「中絶の権利認める「ロー対ウェイド判決」を覆す判決 米国人はどう考えているのか」

Unis must improve abuse-claim handling
大学はハラスメントの申し立て処理を改善するべき

2016年以降のジェンダーに基づく暴力への対応を分析したところ、英国の大学でのハラスメントや虐待を報告した学生に対する支援は「職員への支援までは及んでいないらしい」ことが判明しました。各機関が苦情をどのように処理するかは、専門のサポートスタッフへどれだけ投資し確保しているかによって大きくばらつきがあります。その中では、申立人が訴訟の進行状況や結果についてほとんど情報を受け取らないことも少なくありません。主任研究員のアンナ・ブル氏は「この分析は52件のインタビューに基づいているため、その結果が代表的なものであるかどうかを言うのは難しい」と言います。この報告書は、大学におけるジェンダーに基づく暴力は英国の職場安全規制当局によって監視されるべきだと勧告し、苦情処理に関するより良いガイダンスを求めています。
元記事:Nature
参考:1752グループレポート

⇒元になったレポート(参考)は#MeeTooその後、という感じでまとめられているようだ。

画像:UnsplashMaria Shkliaevaが撮影した写真


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