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【随筆】2024年の正月 -2- 遠く…

 眠りは二日酔いの解消に役立たないと知った、だからと言って起き上がれるわけもなく、布団の上で横になってスマートフォンを触る。この上なくだらしがないこの体の枝の先、小さく光る画面の中では、年始すぐの突然の大災害に、文字が動画が騒めき合っていた。

 地震が起こったと知ったとき特にあわてなかったのは、おそらくいつもの不快なあの警報音がなかったからだろう。おのずと近くのコトではないと判断していたのだ、それだけあのイヤな音に感覚が慣らされたのだろうか。同時に心に浮かんだことは、そこまで大した被害にはならないだろう、というものだった気がする。なぜ、そう思ったのだろう。

 被災地から遠くはなれた布団の上、その手元には、情報たちがおどり溢れていた。まだ、何かを正確に理解するには重すぎる頭と意識の中、もう10年は経つあの大震災から、ヒトはさて何を学んだのだったかと、のろまな思考が静かに揺れた。確かに何かを学んだはずで、それで社会は前よりも上手くやっていくと、なぜか、そう思っていたような。

 で、当の自分はどうだ、過去に何を学んだというのだろう。何かを知ることで、知っただけで、経験することもなく、実行することもなく、それでも前よりよくなったのだと、さて誰がどうやって認めるというのだろうか。

 薄暗い寝室にぼんやり光る画面の中に、有象無象の情報が流れ続ける。頭痛のせいか、ざらつく情報に理解が追いつかない。受け止め方がわからない、言葉のやりとりであふれている。それはどこかの誰かに届けたいのか、どこかの誰かに認められたいのか。―――それは、とにかく学びからは遠いように思えた。

 


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