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【随筆】2024年の正月 -1- 健康と平和

 昨晩少し飲みすぎたせいもあって、元旦早々風邪をひいた。

 朝は雑煮を作り、子どもたちと一緒に食べて、歩いて近くの八幡様へとお参りする予定だったが、一向に布団から出てこない私をよそに、妻と子どもたちは外へと出かけてしまったようで、家は静かだ。

 ひどく頭が痛い、体が重く節々が痛い、喉も痛い。―――もしかしたら喉の痛みはそれほどでもなかったかもしれないが、風邪をひいたのだと言うためには、この苦い感覚は私にとって重要な意味をもっていた。とにかく私は、風邪をひいたのだ。

 気分は悪いままだったが、とにかく静かで何もない、穏やかな始まりの日だと思った。頭は痛いが、冷たい布団が心地よく、体を布団を転がした。平和な年が始まるのだと、ぼんやりとだがそう感じていた。


 外で子どもたちの声がする、どうやら妻と子どもとが帰ってきたようだ。初詣に行ったらしい、妻は自分の健康を祈ったのだそうだ。健康、平和、家内安全―――こうした祈りが、いったい何をしたことになるのだろうと、まず今確かに不健康である私の心に浮かんで、散った。

 頭痛と退屈を紛らわすために聴いていた、いかにも正月らしいお笑い番組が、臨時ニュースで中断した。再開は、されなかった。


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