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アイスランド旅行まだあったヤバい思い出☆もう少しで共同配信記事に?/長崎日々日記番外編

On August 19, I climbed Mt. Esja near Reykjavik, Iceland.
I made a route-finding error and had an experience that could have resulted in my "death".
I've been too embarrassed to write about it until now.
Finally, I have come to record it.

アイスランド旅行から戻って、2か月になろうとしていますが、どうも「深刻なアイスランド病」にかかったみたいで、まだ”恋の未練”のようなものから抜け切れていません。

以下の話も、失敗談の告白? みたいな感じあるので、ともすれば読者の反感買いかねないかと。

とても「恥ずかしい」件です。

特に山登りの昔の仲間に知られたら、あきれられること間違いないので、書くか、書かないか、長い間迷ってました。

しかし、記録しておかないと、いつまでたっても先に進めません。

山のたしなみある人からディスりをくらうのは、仕方ないと観念し、ようやくnoteの原稿としてアップしました。

写真をたくさん掲載しています。長文です。読み飛ばしてください。

エシア山(Mt.Esja)を目指す

アイスランド一周に失敗した後、首都レイキャビクに戻り、観光地の定番「ゴールデンサークル」、お手軽な近郊の温泉「スカイ・ラグーン」、8月3日に噴火した新火山へのトレッキングツアーなどへ行った。

しかし、何か気が晴れなかった。

せっかくトレッキングシューズを持ってきたのに、新火山ツアーではいたとはいえ、まだ不満がどこかしらに残る。

といって、もう、カネのかかる遠出のツアーに行ける余裕はない。

どうしたらいいか。

アイスランド日本大使館のHPで、現大使がレイキャビクの湾を隔ててすぐ真正面に見える「エシア山:Mt.Esja」を紹介していた。

https://www.is.emb-japan.go.jp/itpr_ja/amb.suzuki20220427.html

「あ、これ、これ」。簡単にいけそうじゃん!

高さ754m。レイキャビク市民が「ハイキング」する低山だ。

さっそく観光センターへ行って、バスでのアプローチを聞いた。

地図左下がレイキャビク。この地図では「エシャン山」という表記になっている。赤い印は山の直下についている。山頂は印の真上の台地



2回乗り継ぎが必要だが、もうレイキャビク市内の地理には慣れていたので、迷うはずはない。

しかも、交通費は往復2000円かからない。

8月19日に登ると決め、久しぶりに「うきうき感」が戻った。

「楽勝」ルートと勢いづいて

朝7時前にホステルを出て、エシア山を間近にするバス停で降りたのが午前8時10分。登山道が不明だったが、連山の斜面を下りきったところに、山小屋風の建物が見える。

「あそこが取り付きに違いない」

15分ぐらい歩いて着いたら、そこはキャンプ地だった。

キャンプ地はシーズンのはずだったが、誰も人がいなかった

すぐ近くに砂利道の「登山道」があった。

楽勝だ! 思ったとおり。ひごろトレーニングらしきものを一切していない自分でも、難なくこなせそうだ。

この整備された砂利道が頂上まで続くと思っていたが…

快適だったのは、最初の10分ぐらい。砂利道は消えた。しかし、日本の里山で見るような登山道はしっかりあった。どんどん登る。

入り江沿いに見える道路がバスが通る主要道。アイスランドは北極圏のラインが島中央を通過するぐらいだから、日本のような「森林帯」はごくわずか。すぐに抜けて展望が開ける。

消えた? 登山道

しかし、そのうち、登山道は消えた。小さな沢に出てルートを探すが、ようやく人の踏み跡? らしきものがあるだけ。


せせらぎが心地よい

かまわない。ルートが消えても、目指す山はしっかり視界の中にあるし、行く手をはばむヤブもない。草地の斜面が続くだけだ。沢筋を登っていけば、確実にたどり着ける。

エシア山は台地状になっている。アイスランド全島が溶岩の島。流れ出して広い1000m級の台地を形成、氷河の浸食を受け、このような山になったと推察される。

やがて沢をはずれるが、360度見渡せるため、全く不安はない。

ただ、斜面に出てから足元の岩は、日本アルプスの岩塊流に近くなっていた。

「ようやくトレッキングシューズを持ってきた甲斐があるところに来た」と、かえって興奮した。

岩塊流の斜面。ひたすら歩いて高度をかせぐ


岩塊は次第に大きくなった。旧氷河に運ばれた、あるいは削られた岩の斜面だ

斜面を登り切ったところで、エシア山から延びる連山が開けた。遠くには雪渓(せっけい)が残る。

この中腹でたぶん、まだ高度500mに達していないと思われる

あそこが登山道だったのか

目指すエシア山の方向に目をやると、ひどくはっきりした、車でも通りそうな道が斜面についているではないか。 

主要登山道から完全に外れていた…のだが問題なし。谷を下って、エシア山を巻いているその登山道へ戻ればいいだけだ。

写真右上がエシア山頂上。斜面に広い登山道(左下から中央の曲線)が巻いている

谷へいったん降りる斜面は、落差50m弱ではあったが、危険度は高かった。ちょっと転倒したら、ケガしそう。ヘルメットが必要と感じたが、背中のザックにはない。慎重に一歩一歩下がる。

登るのより、下りが危ない。油断がケガを招く

時間をかけて下りきると、また小さな沢があった。花が咲いている。

写真奥の黄色の花が鮮明じゃない
黄色い花が、かわいい
花はもっとピンク色が強かった。うまく撮れてない

道草がすぎた。登山道へ急ぐ

エシア山が間近に。アイスランドの里山だが、日本の低山とは比較にならない迫力

登山道にたどりついた。斜面を巻きながら、ゆっくり高度をかせぐ

写真奥に見える街並みがレイキャビク

登山道がほぼ直上になる。その後、エシア山最終場面の岩場。左手のチェーン(鎖)を頼りに、結構きつい傾斜角度の道をトラバース(横切る)する。

トラバースの道で見つけた花

「ワナ」にハマりこむ

途中、鎖場が切れた。「あれッ?!」とは思った。しかし正面に道は続いていた。迷わず進む。

この「道」、歩けると思い疑わなかった

20m歩いただろうか。突然、目の前から道が消え、2m少しぐらいの岩がたちはだかった。「おかしいな」とは思った。しかし、その岩を超えると、すぐまた平らな道がありそうだった。

「このぐらい、なんてこと、ないね」。もし、よじ登り、滑り落ちても、体が止まるだけの十分な広さが、立っている地点にあった。

学生時代は山岳部、多少、岩登りの経験はある。40年という月日は流れ、テクニックはサビついているのは明らかだが、「いや、無理」と思える高さじゃなかった。

「三点支持」の基本(両手両足のどれが一つだけを動かしながら登る)に従い、岩の上に出た。

予想どおり、確かに「道らしき道」…があった。

数m進んで、すぐ下に「もう少し広い」”道”が見えた。

慎重に岩場を下りて、さらに歩く。

快適とまでは言えないが、さほど危ないとも思えなかった。

しかし、行けども行けども、高度がかせげない。

最頂部の岩盤地帯を、ひたすら横に移動しているだけでは? という疑いが出てきた。

10分ほど歩いただろうか。

ルートファイディングをミスした、つまり道に迷った、という疑念が払えなくなり、いったん引き返すことにした。

何度もミスして気づかない

「鎖場が切れた」地点に戻った。

その斜め下の「来た道」を振り返りながら、「自分のルート選択に間違いあるようには思えないけどな」としか感じなかった。

もう一度「真正面にある道」にトライすることにした。

今度は、少し意図的に考え込むのをやめて、どんどん歩いた。

速足で20分以上、強行軍を続けただろうか。

この写真を振り返ると、とても「道」とは思えないが、「人の踏み場がある」(左側)と自分で信じ込んで歩き続けた。知らないうちに焦りが出ていた。

突然。

高さ5mはある、岩の壁に「道」はふさがれた。

完全な行き止まりだ。

なのに一瞬、「これも登って、登り切れない、ということはないかも」と考えた。

岩場にはクラック(10数cm~数10cmの割れ目)が走っていたから。

クラック伝いに、足場になりそうな箇所が見えた。

しかし、今度は、岩場直下が土砂の急斜面につながっていて、一度踏み外したらアウトというのは、明らかだった。

ザイル、カラビナ、そしてハーケン…登攀(とうはん:岩登り)時に、わが身を確保、守るための用具なしには冒険がすぎる。

手足滑らせて落ちたら、確実に命にかかわる。

「邦人、アイスランドの山で死亡」

アイスランド発の現地英字紙記事になり、めざとく見つけた共同通信が「日本人の事故」として配信、在職した地方紙にベタ(1段)で載る…そんなシーンが、頭をよぎった。

それだけは避けたい! やめた!

もう頂上に登れなくてもいい。そんなリスクを侵してまで、何の意味がある? 一目散に再度、引き返した。

引き返すときめ決めて後ろを向いたとき、来た道の険しさに驚き撮った一枚

またまた「鎖場が途中でなくなった」ポイントに戻ってきた。斜め下に見えるチェーンを見ながら、歩きだそうとした。

見つけた正規ルート

それにしても。

どこでミスったんだろうな~と未練がましく、真横を見たとき。

「Please follow the chain(この鎖に従って(登って)ください」という注意書きの看板が、目線の隅に飛び込んできた。

そして、なぜか、そこにあるスチール製の階段。

どうしてこの重要な注意書きの看板が目に入らなかったのか、ナゾだ

「ああ、ひどいミスした」という気持ちより先に、宝くじを当てたみたいな興奮が脳天を突いた。

すぐにステップに足を掛けた。

スピードは、出ない。ただミスを恥じ、それを必死に隠し、押し殺すように、先へ先へと急ぐ。

頂上に出た。

展望の方向各所を説明した表示板。アスランド語で書かれていた
ケルン(石を積み上げた標)。平らな「頂上」のこの地もかつては氷河に覆われていたのだろう

時計を見た。午後12時半すぎ。登山開始から4時間以上たっていた。

754mの山にしては、いくらなんでも時間かけすぎだ。

手早くパンとミネラルウォーターで昼食をとると、すぐ下山にとりかかる。

どんよりしたガス(霧状の雲)が、たちまち頂上をおおい、わたしをせかした。

帰りは、砂利が敷かれた”高速道”を、わき目も振らずに前へ。

小雨が降ってきた。

大きな沢に出て、足取りが緩くなった。

最初の取り付きのキャンプ場そばに出た。

道が二つに分かれていた。

ここがエシア山登山道の起点だった

この最初の分岐は、キャンプ場の少し左手奥にあった。

わたしは、よく確かめもせず、右手の砂利道が「登山道」と信じて、登っていた。下ってきて初めて、この分岐があり、主要道が「左」だとわかったわけだ。

いや反省すべきは、もちろん、そんなことではない。

以下、最終場面の山頂下・岩場で、ルートファインディングを誤った図を示す。


見にくい手書き、ご容赦を。①が初回、②が再度ミスして突き進んだルート

岩場を登り始め、鎖場が「切れた」と思いこんだ、その時点で、もっと周りを慎重に見回すべきだった。

深い考えなしに、「前にある平地」を道と信じて歩いた。

そして「迷った」と一度思い直して、ミスした地点まで戻ったのにもかかわらず、再び当初間違えたルートを、十分検討するせずに、突っこんでいった。

この嫌になる、狭い視野、浅はかさはどうだ。

「低山」への甘い見通し、そして「学生時代の昔とった杵柄(きねづか)」が、まだ通用するという、恐ろしい傲慢。

さらにマズかったのは、のルートを進むうち、「これだけ頑張っているのに、なぜ!(頂上にたどりつけない)」という思い、頑張りの”投資”を取り返したいという「コンコルド効果」にとらわれていた。
※コンコルド効果 Wikipedia

ほんとうに、危なかった。

死にたいのか、オレ。

再三のルート選択ミス、そして岩の壁の”どん詰まり”に追い込まれて、なお「登れるかも」と思った、その根拠なき自信はどこから?

その本心は? ホントはもう、ひょっとして、死にたいのかも。

いや、まさか。

岩登りに失敗、転落死するシーンが浮かび、戦慄して逃げ戻ったのだから。

登り口分岐の地図には、登山者への注意書きもあった。

「一人で登らない」

確かに。

特に外国人、過信した初老男性のような人間(わたし)は、ガイドと登るのが鉄則だろう。

アイスランド。魅力と恐怖。明と暗。

ああ、もうたっぷりしみ込んだ。

でもまた行きたい。必ず。

わたしを蠱惑(こわく)してやまない、極北の島。






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